役者の関西弁

 話の途中、「パーティ」と言おうとして「パーテー」と言ってしまった
ら、中学生女子が大笑い。
 脳はもう次に言いたいことを考えているが、それに言葉が追いつかなか
ったみたい。
 そう弁解すると、
「あるある」
「わかる~」
 だが、次の話題に移っても、下を向いて、くすっと思い出し笑いされる。
 ニホン人が日本語を間違えるわけがない、という大前提があるから、彼
女達は安心して私のささやかな言い間違いをからかえたのだろう。
 実際、言葉を習い始めた初心者が少々間違えても、周りの人はみな、温
かい眼差しだ。ところが、上手な人の言い間違いや使い間違いには一転、
すこぶる不寛容になる。
 大学卒業後ずっと東京に住んでいる男友達と会い、言葉の話になった。
 彼は、関西のイントネーションを使わないよう気をつけているが、中で
も「ラジオ」の発音で出自がばれたら軽蔑の視線が半端じゃないそうな。
見下すことで優位に立てたと思う人は、日本語バイリンガルでない引け目
を、そうやって差別することでなだめているのだ、と理解したが、口に出
しては、
「近頃は、大きな企業でも転勤なしとか転勤の範囲が関西圏のみという所
がでてきて、人気みたい。そりゃそうよね」
 とずらした話をした。
 彼は頷いてから、 
「それにしても、俳優や女優が、関西弁がうまくて、びっくりする」  
 と言い、もうすぐ終わるNHKの『まんぷく』を例に挙げた。
 もちろん、安藤サクラ演ずる福子の「あなた」の発音は耳につくし、そ
もそも「あなた」と言うのかという疑問があるが、それは「おっしゃる」
も同じだ。母親役の松坂慶子が単語と単語のあいだをぶつぶつ切る話し方
も気になる。
 でも、「英語を話すより難しい」とどこかで語っていた瀬戸康史を含め、
みな、関西弁ネイティブのごとき流暢さ。
「テレビなんかで小さい頃から関西弁に馴染んでいるから、喋るとなった
ら、その学びが生きるのかも」
 と友が分析する。
 ところが、彼らの言葉の評価が関西人のあいだで大きく二極化している
というインターネットの記事を読んだ。
 超上級の域だからこそ粗探しをしたくなるのだろう。
 パーラー白薔薇の店主役の加藤雅也が、僕は奈良出身だから言葉に苦労
するわけがない、とテレビで言うのを聞いた。
 えっ。
 彼は非関西弁ネイティブだと思っていた。
 松坂慶子同様、誇張して単語を切って話すからか。
「生粋」ってなんだろう。
 わからなくなってきた。