時間厳守

 私は、スケジュール帳は一月スタートが好き。
 年の「きっしょ」からの使い始めになるからだ。
 だが、なぜか十月スタートのが多いし、私が二年続きで使っていて、そ
の後継のを買おうと思っているのも、実は十月スタート。一月スタート版
は存在しないのだ。
 嫌なら、三ヶ月分はおまけだと見て、無視したら、ということか。
 けど、買ったのが十月スタートなら、今使っているのと新しいのに同じ
ことを書くという不毛を決行してしまう。
 来年度用に探しているのが、ない。
 調べたら、製造自体が中止になった模様。
 じゃあ、一週間が見開きのページで、一日の時間軸が縦に取られていて、
外装が、見る度、心ときめくのを探そう。
 土日もそれぞれに縦長の欄をとり、ほかの曜日と同じ扱いになっている
のに辿り着いた。こっちの方がありがたい。サイズが一回り小さいのは残
念だが。
 メーカーのサイトから注文すると、送料無料。
 会員登録したら五百円引き、というのは悩んだが、万一の個人情報流出
のリスクと引き換えにするほどのことかと考え、それはやめた。
 注文受け付けのメールが来た。
 物流センターが千葉県にあり、そこが九月八日の台風十五号の影響で停
電中のため、商品の発送が大幅に遅れる、という一筆。
 そう言えば、千葉に物流センターがある所は結構多いんだったなあ。
 ここもそうだと知っていたら、わざわざ、このタイミングで注文しなか
った。
 すみません。
 ところが、注文した翌日に物流センターから発送され、それが今朝届い
て、停電などなかったが如し。
 いいのか。
 誰かが、どこかで無理していないか。
 フランスの教員夫婦が一年間ニホンに住みに来た時、外交官特権で送っ
た荷物の到着が予定より一日遅れると電話が入った、と奥さんが呆れてい
た。
 奥さんはニホン人。
「たった一日なのよ」 
 仕方がない、を許して、故意の怠慢が増えたら困るから時間厳守、とい
う発想が根底にあるとしたら、わかるけど、精神的にはしんどいなあ。
 でも、思い出した。
 オーストリアにスキー滞在した時、スキー板を脱いで店内を見て回って
いると、閉店の時刻が近づいたらしく、店員が服の掛かったハンガーラッ
クを次々移動し始めた。
 チロル刺繍の子供服が一着、ハンガーごと下に落ちているのが見えたの
で、そう言ったら、時間がない、あるいは明日でも間に合うということか、
私の助言は無視された。
 反対の意味での時間厳守だった。