手相と金ペン

 来年の手帳を買った。ノート感覚の、B5より若干スリムなサイズ。
「これ!」というのは一つ見つかればいいことだけど、私って何かにつ
け少数派になる運命? と考え込まされた。
 月曜から日曜までの一週間分が見開き一ページに横一列に並んでいて、
各曜日の欄は細い縦長。上から下に朝七時から夜九時まで細かく書き込
めるようになっているのだが、このタイプはほとんどないのである。
 日本語は本当は縦書きが美しいと思っていても、スケジュール帳はや
っぱり横書きが使いやすいわよね、と、ようやく胸を張って標準的日本
人になれたつもりでいたら、これに関しては同じ発想の人が少ないらし
くて、うーむ、なんか生きづらい・・・。
 ハハッ。ちょっと言ってみました。
 さて、この手帳。近くのスーパーで、セールの時に十パーセント引き
で買ったが、その前に町の文具店も覗いてみた。
 文房具だけしか売っていなくてやっていけるのか、と大きなお世話の
疑問を胸に抱き、いつも横目で通り過ぎるばかりだった店。
 しかし、スーパーだと、一本しか買わないなら取り寄せてもらえない
金や銀のボールペンも、専門店にはちゃんと置いてある。
 さすが「餅は餅屋」。
 その存在価値に突如感激して、金色のボールペンを買った。
 これで「手相を書いて運命を変える」んだ。
 え。冗談じゃないのかって。
 私も半分、そう思ってます。
 それが証拠に、手相を書いたら宝くじが当たった、結婚できた、ボー
ナス激増・・・等々、『喜びの声大公開』のページに溢れんばかりの美
辞麗句は、黄色い財布などの宣伝でも見るけど、常套句? と軽いジャ
ブにて無視。
 このブームに便乗したのか、手にマークを書けば、その場で様々な身
体の症状が改善すると謳う〃金ペン銀ペン療法〃の雑誌広告を新聞の片
隅に見た時には、そこまで言うのは過激だし無責任よ、とお仕置きした
い気分。
 でも、掌に線を書くことで、もっとエネルギッシュに生きようとか、
絶対、素敵な人と出会うんだとプラスの自己暗示をかけることができる
なら悪くないかも、と、自ら進んで騙されてみることにした次第。
 英語を教えている小学生に「あっ」とめざとく見つけられ、焦ったの
もつかの間、「私も、お姉ちゃんのボールペン、黙って使って書いたこ
とがある」という話に向かったおかげで、この秘密は、まだ私だけの秘
密。 
 運命がぐぃ〜んとあり得ないほど上昇したら、触れ回ってもいいけど。