上に立つ者

フランスで友人宅に滞在中のある晩、友に、
「今から夫と小学校の親の集まりに行くから二人の子守をお願いね」
 と頼まれた。
 夕食後だった。
 両親の参加が当然ゆえ、そういう開始時間になる。
 パリで襲撃事件があった時、近隣の学校に子供を迎えに来た中に父親の
姿が多くあることをテレビは映し出していた。
 翻って日本は、とは思わない。
 もとは同じ昆虫だったが、生き延びるために選ぶ環境が異なった結果、
大きく生態が変わった、というような事例を見れば、日本は今のような社
会を目指した祖先の末裔だとわかる。
 でも、新たな方向に舵を切ってもいい。
 YouTuberのヒカルは、動画にもよく登場するスタッフに、
「彼を使って俺は稼いだし、これからも彼をお金に換えていく」
 という発想で、その彼にぽんと一千万円渡した。
 新たに加わったパートタイムの出演スタッフへは、高級マンションの家
賃負担を会社の福利厚生として引き受けた。
 カジサックが、
「スタッフの生活が向上していくのが嬉しい」
 と公言できるのは、スタッフが次々に良いマンションに引っ越しし、高
級な車を買ったのを見れば、わかる。
 ヒカルやカジサックは、動画に出ない編集スタッフへの給料も、たぶん、
充分に還元しているのだろう、と想像させてもらえる。
 ラファエル然り。
 それどころか、彼は、動画の仕事を会社員と同じ勤務時間で終わらせた
い人らしい。
 素敵。
 自分の会社の人間ではないので給料として上乗せできないオリラジの藤
森慎吾は、吉本興業を退所した時、それまで彼の動画に何度か出演してく
れた吉本所属の女子マネージャーにカルティエの腕時計を贈った。
 どの分野でも、第一人者になるのは、才能ある人。
 でも、そういう者ばかりではこの世は回らない。
 そうわかっている人は、自分の才能を鼻にかけず、部下を正当に扱う。
 そうできない人は、
「俺の夢、俺のプロジェクトに加われるだけでありがたいだろ」
 という態度で、「やり甲斐搾取」という意味不明の手段に出る。
 改めてそう気づかせてくれたのは、吉本興業に「会社ごとガン詰め」し
たら三日で契約終了されたキングコング西野亮廣だ。
 今も、彼に関する記事が出る。
 でも、退所の引き金になった彼のツイッターの不思議な言い回しを解読
してくれた記事はあっただろうか。
 私は、その言葉に引っかかり、そこからいろいろ考えさせられることに
なったのだった。