壊れないと、買い替えられない

 先月の話になるが、節分の日。
 仕事帰りにスーパーマーケットで巻き寿司を買おうと思ったら、まだ九
時なのに、ない。一本も。
 かくて巻き寿司を目撃しない節分となった。
 食品ロス問題や新型コロナウイルスで、売れ残りを出さない本気度が発
揮されたんだろうな。
 商売は対応が迅速。
 健康診断では、心電図測定で手首足首に電極を装置された時に、その感
触がなんか違う。測定はほぼ一瞬で終わったし。
「器械は進化しますから」
 と看護婦さん。
 そうか。投資の価値ありと判断して、新しいのが導入されたんだ。
 思い切りの良さは重要だ。
 でも、日常生活は個人的な好み、つまり感情が動機となるから、古いま
ま刷新されないことも多いのではないか。私は、そう。
 去年、十六年目で冷蔵庫が壊れた時、まだ動いてほしいと思ったのは、
物はなるべく長く使いたい派だから。
 が、電気代が大幅に減った。調子が悪くなってからの半年ほどは必要以
上に電気代がかかっていたかもと思うと困惑である。
 新しい冷蔵庫ほど電気代が安くなるので、冷蔵庫を月賦で購入したら、
その月々の支払い額が、これまで高く払っていた電気代と相殺できる、と
いう理屈で冷蔵庫の買い換えを語る過去の新聞記事の切り抜きが、今頃出
てきて、ああ、本当じゃん。
 先日はシャーペンだ。
 女性は手が小さいので、シャーペンの消しゴム部分までの長さが短い方
が芯を押す時ラク
 私は主に外出先で使うから、細い胴体が、軽くていい。
 この視点で選んだシャーペンは、もう十年以上になるが、今も健在。
一つは家、一つは外出用で二本。色も同じなのは、その色しか作られてい
なかったのだろう。
 滅多に使わない。が、その滅多に使わない時に芯がポキポキ折れる。
 でも、壊れないから買い換えられない。良いと思って選んだんだし。
 とは言え、ここぞという時折れられるとイラッとするので、二年前、芯
が折れないという触れ込みの現代版のシャーペンを買った。外出用のみで
いいので、一本。
 その頭の部分が弾け飛んだ。
 え、もう寿命。
 折れないはずの芯は結構折れたし、やっぱり古い方が作りが堅牢なのか
と懐古主義に戻りかけるが、使うとポキッ。いらっ。
 そのストレスが嫌で、もう一度、文房具の進化に賭けることにした。
 まずは中学生に意見を聞こう。
 ケースの底の磁石に消しクズが付く鉄粉入りの消しゴムなど、最前線を
知っている。
「これがいいです。友達もみんな、これです」