再び、四十肩

 両手を広げた状態で手を捻る簡単なストレッチをした途端、グギッとい
う音と共に右肩から腕に違和感が走った去年の夏。 
 手は真上に上がるので、四十肩、五十肩ではないと思った。
 じゃあ、何。
 パリ在住中、全身に大理石状の図柄が浮かび上がった時の記憶が蘇る。
 沈痛な面持ちでかかりつけ医に行ったが、分厚い医学書の中から同じ症
状の写真が載ったページを見せられると、翌日から入院なのに、喜びが弾
けた。
 治るんだ。
 今回は、右手のせいで、ブラジャーのホックを背中で留められない。
 右手を後ろに伸ばすと痛い。
 調べたら、後ろに手が回らないのも肩関節周囲炎だとわかり、安堵した。
 そう言えば、三年前の七月七日に、やっぱり右腕の違和感で整形外科に
行き、リハビリで二日後には完治し、驚いた、と私はブログに書いている。
 だが、芸人かまいたちの山内は、三年前から右肩が上がらなくなり、四
つの病院で、
「たぶん四十肩だからリハビリを」
 と言われ、針や整体では、施術の後、
「動くようになったでしょう」
 と言われて一瞬良くなった気はするものの回復には遠く、最終的に、知
り合いの有名なボクサーに紹介してもらった名医の診断で、腱が切れてい
るとわかり、手術で回復した、とユーチューブの彼らのチャンネルで語っ
ていた。
 私は、アレルギーで通院している医者に話した。
 漢方が専門なので漢方薬が処方された。
 みんな、自分の得意分野で解決できると信じているんだなあ。
 漢方薬はおなかの調子がおかしくなって早々にやめたが、相談した時に、
肩を温めるのはいいかと聞いたら、
「よい」
 と言われ、『あずきのチカラ』を勧められた。
 彼は、眼精疲労対策で「目もと用」を使っているらしい。
 私は、「首肩用」を買い、首に巻いて寝てみた。
 朝方、トイレに立った時は、そのあいだに電子レンジで温めて、首に巻
いてベッドに戻る。このまま起きたほうがいいかなあ、と迷っていた心身
が一気に睡眠に引きずり込まれる。冬に向かっているせいもあっただろう
が、もともと寝付きのよい私が、これは手放せなくなった。
 たまに右腕の痛みがある辺りに巻いて寝る。
 腕の状態は相変わらず。
 理学療法士によるリハビリに辿り着くために、レントゲン写真は必要悪
だと受け入れて整形外科に行くべきか。
 でも、私も肩の腱が切れているのかも。
 しかし、私には、名医を紹介してくれる有力なつてはない。
 春になった。