渋すぎる趣味

 私は、朝晩、体重を測り、カレンダーに記入している。
 先月の最終日、三十日のカレンダーの枠に記入しようとしたら、もう埋
まっている。
 その日の分を翌日の枠にも書いてしまった日は・・・ない。
 カレンダーが日曜、スケジュール帳が月曜始まりだと、曜日の枠を直感
で把握する能力が発揮できない憂鬱について、前回書いたら、すぐにその
せいの具体的な混乱が具現化したなんて。
 すごいタイミングだ。
 ただ、そのカレンダーはフランス製の月曜始まりなので、いつかはこう
いう間違いが起こっても仕方なかったかも。
 この頃、昼間テレビでやっている古い海外映画の再放送を、よく見る。
 番組欄で『子鹿物語』という言葉を見た時、小学生の私に父が買ってく
れた本だったので、懐かしくて、見て、それから、この時間帯の放送を好
んで見るようになったのだ。
『愛情物語』では、主人公の男性が戦場でピアノを弾いた時のメロディが、
単純なのに耳に残る名曲で、曲名がわかれば、最後まで聴けるのになあ。
 その曲名を知る日が来た。
 これまた過去のドラマの再放送だが、『刑事コロンボ』の中でコロンボ
がつたなく弾いたのがその曲で、殺人犯の指揮者がその曲名を口にしたの
だ。
 Chopsticks。
 そうとわかれば、動画で探せる。
 そう言えば、『プライベート・ライアン(Saving Private Ryan)』で
敵の接近を待つしばしの休息の中、村のスピーカーから流れるフランス語
の歌詞と曲に心惹かれたのは、しばらくして、フランスの友達がくれた恋
の名曲百選のCDの中に収められていた。
 Tu es Partout(あなたはどこにもいる)
 私が映画で聴いて初めて曲名を知りたいと思った記念の曲だ。
 これら一連は、私にとって「良きタイミング」だった。
 望んでから叶うまでに時間差がありすぎたかもしれないが、頑張って探
さないのに、勝手に答えがもたらされたのだから。
 完璧に他力のおかげなのだから。
 ところで、『わが谷は緑なりき』や『黄色いリボン』では、声帯が太い
アメリカ人の合唱を聴き、合唱というものに初めて魅了されたし、ドリス・
デイや当時の俳優、女優達の、スターという名にふさわしい才能に驚かさ
れた。
 だが、みんな、死んだ。
 誰かとこういう話をしたいが、相手は見つからないだろう。
 私自身、変な趣味にはまったなあ、と思うぐらいだし。
 けど、これも、私のタイミングなのだろう。