スーパーの切り身魚

 スーパーマーケットの鶏肉に、消費期限が長いのと短いのがある。
 生ものなので、長い方はなぜ、と疑念が湧く。
 ちょうど普段は売り場に出てこない鶏肉担当の男性が出てきていたので、
聞いた。
「知らぬことは知りたる人に問うべし」
 である。
「そういうガスを入れている」
 というような答えが返ってきた。
 ガス包装と言われている方法なのだろう。
 納得。
 でも、この男性。一応答えてくれたので文句はないが、答える時、そんな
ことも知らないのかと言いたげな表情だったので、私は、
「こちとら素人ですぜ、業界の常識を知らないからって軽蔑されても」
と心の中で思ったのだった。
 さて、スーパーの店内でさばかれ、即、店頭に並べられる切り身魚である。
 私が大好きな鯖は特にそうだが、ほんの少し時間が経っただけで、切り口
から血あるいは血のような物が滲み出る。
 牛肉、豚肉、鶏肉も時間が経つと組織が破壊され液状になったのが流れ出
て、容器を傾けると隅の角に溜まる。
 ドリップ。
 気になるけれど、魚の切り身の場合、特に気になる。
 以前は、魚の下にそういうのを吸収する白いシートが敷かれていた気がす
る。
 シートが赤く染まるのを間違って悪く受け止める消費者が相次ぎ、廃止さ
れたのか。価格を抑えるために、なくしたのか。
 でも、今さばかれて新鮮なはずが、そう見えなくて買う気が失せる私のよ
うな客が結構いるとしたら、結局は売れ残って廃棄処分になり、大局的に見
て損な売り方をしていることになるのではないか。
「そうだ、缶詰だ」
 と一時期、鯖と鰯の缶詰にはまったが、飽きた。
 冷凍の鯖や鰯や秋刀魚は出回っていないし。
 今、私は鮮魚難民。
 それに野菜難民でもある。
 近隣の県から毎朝直送されてくる野菜類が売られている場所が終了になっ
たのだ。
 小松菜一つとっても、出店農家の人がそれぞれに値段を付けるので、いろ
いろ。
 小芋は、絶対に、スーパーマーケットで売られているのより、安心できる。
 一つ一つが大きいし、切ったら中に赤い毛細血管が走っているような古い
のは混じっていない。
 大根は、季節外れで大きくなりすぎ、しかも堂々と三センチぐらいの穴が
開いているのも平気で売られるのはどうかと思うが、値段は激安設定なので、
買う人はいる。
 選んで、納得して、買う。
 そんな楽しみがあった。
 閉店後は、より広い場所で営業を再開されるらしいが、私はそこまでは買
いに行けない。
 食材の値段は上がり、内容は悪くなる。
 打撃の春だ。