ウクライナ侵攻十日目

 三月三日は雛祭りだった。
 半月前に買った桃の花がまだ咲いているので、直前に新たに買い直さなく
てもいいかなあ。
 パソコンの写真アルバムを見てみた。
 二年前から雛人形の周辺を撮影している。
 毎年同じだから撮らなくてもいい、とも思ったけど、撮る気になったのは、
不要ならいつでも消せる、でも、写真を撮れるのはその時だけ、という思い
が勝ったからだ。
 すると、二年前は、桃の枝が普通の生花と同じぐらいの背丈に切られてい
るせいか、桃の花がもっと密集して、賑やかに見える。
 一年前は、桃以外の花も生けていて、今見ると、あんまり良いとは思えな
い。
 今年は枝を切らずに背丈が高いままなので、桃は木だということがわかる
のがいいと感じる。
 掌に載るような小さなお内裏様とお雛様。
 その両側に飾るお菓子も毎年変わり映えしないと思っていたが、去年は、
当日、伊達巻きの寿司と桜餅をお供えしている。
 定点観測は、その時々の気分に気づかせてくれて、結構、役に立つもので
ある。
 結局、前日に、新たに桃の花を買った。
「暖かかったらすぐに咲きますよ」
 と言われたが、お雛様を片付けてしまった今日になって、ようやくすべて
の蕾が開き始めて、もう少し早く買っていればと悔やまれる。
 が、二月に発症したアレルギー症状が治まるまでは、気力が出なかった。
 とりあえず、桃の花は生けてあり、お菓子も供えてあるんだし。
 幸い、体調が良くなってきたので、当日は伊達巻きの寿司と桜餅を買って、
食べた。
 翌日は、菓子類。
 お腹は空いていないが、むしゃむしゃ食べる。
 食べるのは、不安だから。
 不安なのは、ロシアのウクライナ侵攻。
 今の私の命には直接影響しないのに、テレビのお気楽な番組もパラリンピ
ックも、興味が湧かない。
 インターネットでウクライナの最新情報を得るべく、フランスのテレビや
ラジオを見聞きする。
 それで不安になるのなら、見なけりゃいい。
 でも、人は、自分の言動をちゃんと解き明かせるものだろうか。
 なぜか私はこのスポーツにのめり込んでしまう、という理由とか。
 その事実を見て、ああ、私はこうなんだ、とひとごとのように理解し、伸
ばして良い方向性のものなら研鑽するし、人間的に良くないことなら別方向
に舵を切るべく理性を使う。それが、できる精一杯なのではないか。
 幸い、さっき、お菓子を食べ尽くした。
 無意味に胃を痛めつける愚行は、もう終了。
 ストレス発散がほかに向かわなければいいんだけど。