旅先の写真

 三泊四日の長野旅行中、私は写真を二百九十九枚撮った。
 主に風景。
 あとは友達と私、友達とダンナさん。それか私一人。
 私が撮る時は必ず同じ構図で二、三枚撮る。
 撮ってもらう時も同様に頼む。
 目をつむったりして残念な写真しか撮れなかった、ということがないよう
にするためだ。
 戸隠神社では、友は駐車場で待ち、彼女のダンナさんと私だけで奥社まで
登った。
 奥社の前に立つ私を、ダンナさんに撮ってもらう。
 視界の隅に、若い男女が代わりばんこにスマホで写真を取り合っている姿
が見える。みんなそうするものだが、この二人の撮影時間は普通より長い。
 私は、女性に声をかけた。
「撮ってあげましょうか」
 まあ、嬉しい、と口に出しては言わないが、そうだとわかる表情。
 そりゃそうよね。旅先で本当に撮りたいのは、二人で写った写真。
 私はスマホを受け取り、数枚撮った。慣れぬスマホゆえ連写になったのか、
私の意図を指が正確に反映してそうなったのか。なんにせよ、ちゃんと数枚
撮れた。
 その私の秘めたる真意は明かさず、ただ、
「何枚か撮りました」
 とだけ伝えた。
 写真を確認して喜ぶ二人。
 それから、女性が、
「撮りましょうか」
 まあ、普通はそう言うだろう。
 でも、私が一緒にいるのは他人の夫。
 そう説明して、だから、いいです、と辞退。
 その後、友の夫から奥社の後ろの山の説明などを聞き、狭い境内にしばし
滞在。
 若い二人もまだいる。
 女性の方が再び、
「撮りますけど」
 彼女は律儀な人なのかもしれない。
 私は、是が非でも人のダンナと二人で写りたくないわけではないし。
「じゃあ、お願いします」
 帰宅後、パソコンで写真を確認して、後悔した。
 私達は奥社の前に立ち、上半身が写る大きさで撮ってもらった。
 一方、私は、彼女達が奥社の横に立ったからだが、奥社全体が写る構図に
したので、二人の足もとまで写っている。その分、人物が小さい。
 スマホ上で拡大すればよい、ということではなく、もともと人物像が大き
い構図のも撮ってあげたらよかった。
 今度からそうしよう。
 さて、二百九十九枚の中から数十枚、友のスマホに送った。
 それから、インターネットで注文して、葉書サイズにプリントしたのを郵
送することに。手にして見られる写真も悪くないはずだから。
 カメラ屋に行き、会員カードを出す。
 申し訳程度のポイントしかつかないだろうけど。
 が、
「これは今年の二月で終了になったんです。今はLINEのお友達登録で」
 また、私の生息領域が狭まった。