宝くじ

 宝くじは当たらない。
 宝くじの種類によって確率は変わるが、どれでも、一等の当選確率は交通
事故に遭うより低いという計算結果が出ているのだったと思う。
 それに、金持ちYoutuberが実際に百万円分宝くじを買い、当選額が元手の
半分にも満たなかったという現実を見せてくれたら、宝くじに甘い幻想は持
てなくなる。
 でも、百万円という投資額は、宝くじの一等を当てるには足りないのでは
ないか。そんなことを思い始めたら、思考がギャンブル脳になり始めたのだ
ろう。
 先週、何かの拍子に、ロト7がキャリーオーバー中、という情報に触れた。
 普通だったら目に入っても脳が反応しないが、心が動いた。
 当たらないと思っているのに、当たるかも、と思う。
 投入資金のすごさで一等をもぎ取ることができない私に頼れるのは、運。
 運であれば当たるかも、なんて思えてきたのだ。
 それに使うのは三百円。
 私に運の神様が微笑んでくれるかどうかに賭けるのだから、好きな数字と
か、当たりそうな数字を考えたり、これまでの当選数字から推測するなんて
こざかしいことはしない。
 でも、機械任せは味気ないので、売り場で、用紙に印刷された数字を見る
ともなく眺め、ふと目が行った先を七箇所塗った。
 ロトは末等は絶対当たるということはない。
 払戻金ゼロだった。でも、一等は二口出て、キャリーオーバー終了。
 その後、長らく開けていない引き出しの中の、大切な物を入れておく木彫
りの箱の中を見たら、サマージャンボ宝くじが入っていた。未開封
 私は、あるはずの物があると思った所にないと、私という人間はどういう
思考で物の置き場を決めるか、と思い返して、見つけられることが多い。
 その方法で、宝くじを封を切らずに置いておいた理由を考えた。
 当選発表の日まで開封しない方が恬淡(てんたん)とした態度である、と
運の神様に評価してもらえると考えたのだろう。宝くじを買った時点で無欲
とはほど遠いのに。
 調べたら、連番で十枚買えば誰でも当たる末等の三百円だけが当たってい
た。
 でも、もらえない。
 時効を二年以上過ぎている。
 高額当選金が時効間近というニュースを見るたび、あれまあ、と呆れてい
たが、三百円なら時効にしていい、ということはない。
 月日が経つのは意外に早いから、時効までの期間をもう少し長くしてくれ
たらいいなあ。
 今、ロト6とロト7がキャリーオーバー発生中だとか。
 幻の三百円が悔やまれる。
 いや、宝くじは止めな、という天の声か。