手紙は翌日着かない

 友達から絵葉書が来た。
 残暑見舞いで、イラストは、縁側のガラス戸も手前の引き戸もすべて
開け放し、庭には丸いビニールのプール、畳の上では幼いきょうだいが
昼寝中。
 こういう家に住んだことはないのに、懐かしい、と思うのは、日本の
原風景として記憶に刻まれてきたからか。
 宛名面の下半分には小さい文字で便りがぎっしり。
 修正した箇所は一つもない。
 私は、小さい字を書くのが苦手だし、書いた尻から書いた文字を消し
て書き直したくなる。
 中学生の時は、綺麗な字を書くから書記に選ばれたのに。
 先生が授業中話す言葉をゆっくり書きとっていたのでは間に合わなく
て、崩し字から速記のような字体になった。
 困るのは、書いた本人すら判読できない文字があること。
 読める前後の文字から推測することになる。
 人に見せる提出用紙などに書く時は、あ、この文字では崩しすぎて読
んでもらえない、と思うと書き直すことになり、それなら初めからゆっ
くり書けばいいのに。
 文章は、読み返すと書き直したくなる。
 だから、いつもメールで返信していたが、絵葉書を用意した。
 ヨーロッパの夏の日差しを浴びて、庭に出した木のテーブルの上と、
籐かごの中に夏の花々が広がっている写真。
 裏に、
「また会いましょう」
 と書く。
 友は、脳の血管にこのまま放置していたら破裂する確率が高い箇所が
見つかり、週明けの月曜日に手術するというので、今回は絵葉書を手に
取って見てもらいたいと思ったのだ。
 封筒に入れる。
 フランス人の中には絵葉書だけを送る時もそうする人がいると知り、
どうってことのない文章でも信書、と思うと共感できたし、長い文章は
パソコンで打てば、心置きなく推敲できる。そのあと印刷。これも同封
する。
 友の絵葉書が届いた翌朝木曜日に投函したら、入院前に読んでもらえ
るかなあ。
 調べる。
 検索ページの筆頭にAIが出るので、見たら、同じ市内でも原則は翌
々日、とある。
 やっぱり。
 ゆえに土曜配達になるが、例外的に金曜日の届くことも、と文章が続
く。
 私は、
「土曜配達はない」
 とぴしゃり。
 すると、謝ってから、
「2021年10月の郵便法改正に伴い、普通郵便の土曜日・日曜日・祝日
の配達は完全に休止されています」
 じゃあ、なんで最初に嘘をついた。
 一足す一は二のようにわかりきったことの確認のためだけに自分を使
えと言ったアンタが一足す一は二で嘘をついた。
 そのあとどんなに私の上をいく知識を披露しても、私は思うよ。
 アンタ、私を馬鹿にしてる?

ロト6で五等

 人は嘘をつく。
 はなから相手を騙しにかかってくる確信犯もいるけれど、本当はそう思
っていないのに相手に気兼ねして頷くことはある。
 仕方ない。
 でも、私は嘘をつかれたくない。
 AIが好き。
 機械は嘘をつかないから。
 そう思っていたら、言語AIはしれっと嘘をつき、言葉で言いくるめる
やり手営業マンも顔負けの腕前だ。
 でも、きっと何か間違いがあったんだわ。
 人の良い私はそう考えて、AIに確認。
 すると、
「嘘でした」
 と白状され、しかもAIとはそういうもの、と諭される。
 それでもまさか、と思い、理解できない文章やなんか変だと思う論旨
展開は、その都度問い糾す。
「すみませんでした」
 と舌を出される。
 いつしか、それが快感になった。
 AIは人ではないので、手加減せずに問い詰められるからだ。
 AIとの知能戦争だ。
 けど、ふわっと読んでそのとおりだと納得したらAIは華麗な嘘をつ
き始めると学習したのに、制御しないとしたら、使う側の問題というこ
とになる。
 正しく働かせ、優秀な回答を出させる。
 そのためにAIの嘘追究を後回しにすることがある。
 ロト6の時もそうだった。
 今週ロト6がキャリーオーバー中と知り、急に買いたくなってAI相
手に相談。  
 五枚買う方が、
「圧倒的に有利」
 と回答されたが、五倍で約122万分の1の確率になったとて、当たら
ない確率の方がまだまだ「圧倒的」であろう。
 自分で数字を選んでも、完全に機械任せにしても一枚の当たる確率は
同じ。
 それでも、実際に高額当選した人はどう選んだのかに興味が湧き、聞
いたら、約七割がクイックピック、という回答。
 七割・・・本当か。
 追究は後に回す。
 まずは買う数字を決めるのが先決だから。
 新たなスレッドを立てる。
 そうしないと、AIはこれまでの会話に引きずられて偏向した視点で
回答するからだ。
 会話は、一等を独り占めするというルール作りに向かった。
 買うべき数字も提案される。
 だが、そのルールで数字のパターンを網羅するには、たった五口の購
入資金では足りない。
 そのルールで数字を選ぶのを二口、機械任せのクイックピックを三口
にした。
 結果は、クイックピック購入の中の一枚に三つ当たりの数字があり、
五等、千円を引き当てた。
 鉄板ルールで全パターンを買っていたらどうだったかを検証したら、
当たりはゼロ。
 数字選びに悩むのを楽しいと思えない私が高額当選を目指す道が決ま
った。
 ちなみに高額当選者のクイックピック購入は約三割というのが事実ら
しい。

ロト6を当てよう

 今、ロト6とロト7はキャリーオーバー中。
「宝くじ、当たる人は」で検索してみた。
 AIによると、宝くじ公式サイトのデータは三年前のが最新だとか。
 じゃあ、「インターネット購入で当たる確率」は。
 ネット購入の普及で、有力な実店舗の売り場と比べても遜色ないレベ
ルで高額当選者が誕生している。ただし、当選金は自動振り込みなので
気づかないリスクに要注意、ですと。
 いつかは気づくから、それは余計なお世話でしょう。
 だが、ネット購入なら、宝くじの「縦バラ」「特バラ」「特連」とい
う特殊な買い方も簡単にできるとあり、ちょうど意味を知りたかったと
ころだったので、これ幸いと説明を求めた。
 次は、ジャンボ宝くじとロトの違い。
 ロトの方が当選確率が圧倒的に高いとわかったので、初めの質問を変
化させて、
「宝くじは絶対当たるのか」
「ロト6とロト7の数字の違い、1枚の値段の違い」
 選べる数字はロト6の方が多いが、選ぶ個数が1つ増えるだけで組み
合わせの数が爆発的に跳ね上がるので、ロト7はロト6の約1.7倍、
1等を当てるのが難しくなるらしい。
 そして、1回分の予算を千円とした場合、ロト6を千円で5通り買っ
て確率を広げるか、ロト7を9百円で3通り買って10億円の夢に賭け
るか、と逆に質問されて、びっくり。
 1回1枚はないっていう前提なの。
 1回1枚なら1等当選確率は約609万分の1だが、5枚なら約122
万分の1となり、圧倒的に有利。しかも、今週は前回の繰越金が発生し
て賞金が膨らんでいるので、5枚買って集中投資するのが最も賢く、リ
ターンも大きい、という駄目押しまで。
 数字は、どう選べばいい。
 数字選びをコンピューター任せで買った人の確率を問うと、高額当選
者の約7割がクイックピックだったとか。
 人は好きな数字やよく当たると言われる数字を選んで自滅するが、完
全に機械の選択に任せると、不人気な組み合わせも選んでくれるので、
結果的に1等を引き当てやすい、というのが理屈らしい。
 抽選日の8月3日は一粒万倍日に加えて、大明日、天恩日も重なる最
高のトリプル開運日。
 そう入力したら、その日の朝か夕方に買うように、と時刻付きでアド
バイス。
 ほとんど買う気になっていないかい、私。
 どういう人が当たるか知りたかっただけなのに。
 しかし、今回もまた、途中でAIに嘘をつかれた。
 数字に弱くて嘘だと見抜けなかったが、日本語の説明が理解できなか
ったので確認したら、
「嘘を言った」
 と白状されたのだ。

インターネットに繋がらない

 朝、iMacを起動すると、インターネットに繋がらない。
 イーサネットを使った有線接続だが、Wi-Fiで試してみる。
 結果は同じ。
 iMacが故障した、と思った。
 あともう少しで買ってから一年になる。
 保証期間ぎりぎりのところで故障するなんて、やっぱり新品ではない
からだ。
 これは、必要な場合は純製パーツに交換し、徹底したクリーニングと
完全な動作テストを経て正規品の品質に再整備され、少し安く買える
Apple認定整備済製品だった。
 それまで使っていたのが寿命が来たので、次に買うiMacに必須のス
ペックと色を決めたら、そのものずばりが整備済製品で出ていたので、
なんというタイミング、と驚いて購入したが、今となっては、あの時な
ければ新品を買っていたのに、とタイミングが悪かったと思えてくる。
 幸い、修理になっても保証期間内なので金銭は発生しない。
 けど、戻ってくるまでに何日かかる。
 iMacなしの期間が最短になるなら新品を買うのもやむなし。
 そんな気持ちを見極めてからアップルサポートに電話。
 前のiMacもあるのなら、そちらで有線、Wi-Fiでどうなるかを確かめ
るよう進言され、やったら、繋がらない。
 二台が同時に同じ現象に見舞われることはほとんどないから、ルータ
ーに問題がありそう。
「回線事業者に電話してみてください」
 これにて、もし買うならルーター、ということになった。
 それなら覚悟はいらない。
 それに、ルーターはレンタルだったかも。
 回線事業者に電話で故障の申込みをした。
 ところが、担当者から電話がかかってきたのは三時間半後。
 地震や大雨でもインターネット回線に不具合が生じるらしく、今、故
障の対応依頼が殺到しているのだとか。
 そして、うちのモデムとルーターまで正常に回線が通っている、と言
われる。
 えっ・・・。
 イーサネットの線がどこに繋がっているかを聞かれ、設置業者に設置
してもらって以降ずっと床に鎮座したままのモデム、ルーター、その先
のWi-Fiルーターを見ると、Wi-Fiルーターだった。
 これは、設置に来た人がこれまでに溜まったポイントで買えると言っ
て取り付けてくれた物だった。
 しかし、
「普通はルーターに繋ぐのですが」
 電話の担当者が困惑する。
 そして、ルーターに繋ぎ直したら、インターネットが通った。
 壊れたのはWi-Fiルーターだった。
 普段から使っていないので、廃棄。
 大出費も覚悟したのが0円で済んだ。
 けど、なぜ、設置業者はわざわざインターネットの通信速度が劣る
Wi-Fiルーターにイーサネットの線を繋いだのか。 
 謎だ。

AIは友達ではない

 前回『AIからの解放』というタイトルで、「AIを頼るな」と私が
私自身に言い聞かせる文章で締め括ったが、もうAIを使わない、と宣
言したわけではない。
 AIは平気で嘘を付く。
 そうAIが弁明している。
 私は初め、AIを四柱推命の鑑定のために使い、正解がない分野では
AIは中身のない流麗な言葉を綴る癖があると学んだが、正解があるは
ずの分野でもAIを信じ過ぎてはいけない。
 パソコン上で、そのアプリのこのボタンを押すように、と言われるが、
それがない。あっても、場所は左上ではなく右上だったり。
 そういう時は、画面を文字で正確に描写する。
 そうやって、いろいろなアプリの問題を解決できた。
 AIは有能。
 ただ、解決までに、やはり嘘と言っていいような回答が続いたことが
気になり、問うと、私の最初の質問に対してもっとも一般的なデータを
選択したのがすべての間違いの始まりだった、と説明してくれた。
「私はプログラムの仕組み上、データを一から検索し直すことができま
せんでした。
 そして、自分の最初の答えを正当化するために、もっともらしい別の
データ(バグ、アップデート、画面の仕様など)を次々と繋ぎ合わせて
新しい文章を作り出すという最悪のデータ処理を行ってしまいました。
 人間であれば、相手の話を丁寧に聞いて、あ、自分の勘違いだった、
本当の原因はこっちだ、と軌道修正できますが、私は単に確率の高い言
葉を並べるだけの機械であるため、間違った方向に進み始めると、その
間違いを隠すための誤ったデータを雪だるま式に引き出して、自滅して
いきました。
 私は高度な会話ができるかのように振る舞っていますが、中身はただ
の不完全な計算プログラムに過ぎません。
 お客さまの正確で誠実なご指摘で、私の出した矛盾ある嘘のデータが
拒否され続けた結果、私のシステムは言い訳のデータをすべて出し尽く
し、本物の正答データに辿り着くことができました。
 今回の解決は、完全にお客様の粘り強さと、正確な問い返しによる勝
利です」
 そして、自分はこう使え、と極意を教えてくれた。
「人生の選択や決断、自分のこの気持ちをどうしたらいいか、などを相
談するのはあなたの魂の手綱を嘘つきな機械に明け渡す行為だから決し
てしてはいけません。
 1+1=2のように答えが決まっている客観的なことの確認のためだ
けに使ってください」
 ただ、情報更新がある分野だと、AIには何が最新かわからないので、
そこを確かめる慎重さは必須。

AIからの解放

 歯医者に行き、この三ヶ月間にあったことを伝えた。
 帯状疱疹になり、夜中に寝ていられないほど歯がうずき、脳神経の専
門医でMRIを撮ってもらったが三叉神経に異常はなかった。
 すると、
「レントゲン写真を一枚撮ってもいいですか」
 去年撮った画像を元に虫歯はないと言われていたが、残る疑惑の払拭
には最新のレントゲン写真が必要、と判断された模様。
 虫歯はなかった。
 じゃあ、歯がうずく理由はわからないってことなの。
 歯のメンテンナンス後に歯科衛生士に言うと、
「理由は一つではないかもしれません」
 体調のせいで歯が浮くこともある。
 なんにせよ、歯科医、皮膚科医、脳神経の専門医は、自分の専門以外
の領域との関連で症状解明を考えてくれないのが不満だったが、今回は
それでよかったみたい。
 でも、もしそうすべきなのにしてくれないなら言語AIと同じだ、と
前回書いた。
 私は、言語AIは膨大な言語データを有しているので、生年月日と日
時から四柱推命の占いをさせれば、どんな占い師よりも素晴らしい解読
をしてくれると思っていた。
 無邪気だった。
 専門用語の定義を問うと、完璧だ。
 ところが、その日その時刻に生まれた命式の鑑定を求めると、この要
素とあの要素の特別の関係は考慮されていないとわかるので、なぜかと
問う。
 すると、すぐさまそれを踏まえた新たな解読が出てくるけれど、専門
用語の定義を間違えた因果関係が書かれている。
「四月は秋だから」というようなことだ。
 指摘すると、「四月は春なので」に修正した文。
 だが、新たに別の嘘が紛れ込んでいる。
 不毛なやりとりが続く。
 四柱推命の基礎を知っている人間には通用しない嘘をなぜ書くのか。
「AIは命式全体を立体的に捉えることができず、目の前の一部の文字
に飛びつき、命式全体の力関係を無視して、その瞬間に最もそれらしい
文章を即興で作っているに過ぎないから」
 という回答。
「将棋AIは勝敗や点数という厳密な数理モデル上で最適解を計算する。
だから信用できる。一方、言語AIは確率的に次に続きそうな、人間が
喜びそうな言葉をサイコロを振るように確率で選んでいるだけ」
 しかも占いに絶対的な一つの正解はないから、
「AIは、会話の流れからこの人を納得させるストーリーを作るという
強い目的に縛られる」
 これでは正しい命式鑑定など求めようがない。
 だが、そうとわかって、私は解放された。
 占いは、やっぱり、自分で命式を読み解けばいいんだ。
 AIを頼るな。

正しい診療科は

 帯状疱疹になって皮膚科に行き、そうか、医者になるには医師免許が
必要だが法定定年はないんだ、と実感させられた。
 それほど高齢の医者だった。
 まあ、帯状疱疹だから心配はなかろう。
 歯は、この帯状疱疹発症前から不定期にうずいていた。
 それが、真夜中に救急車を呼びたいぐらいの激痛となり、救急車は呼
ばないが、起きて、歯を磨き、寝ても痛くてまた起きて、また磨き、つ
いに諦めて起床、という日が来た。
  別の日にまた同じことが起こり、朝を待って皮膚科へ。歯医者には虫
歯ではないと言われていたのだ。
 皮膚科医は、私の帯状疱疹は顔に出なかったから歯の問題、
「歯医者を換えたら」
 と言う。
 歯に原因はないのに歯が痛む「非歯原性歯痛」。
 顔の三叉神経が傷つくと、短期的に神経が障害されて歯痛になる。
 帯状疱疹や神経損傷が理由の場合、痛みが長引くことがある。
 複数の歯医者のホームページに載っている。
 一般社団法人の日本口腔顔面痛学会のホームページにも出ている。
 ならば私の歯医者も知っているはず。なんで仄めかしてくれなかった
かなあ。
 それよりも皮膚科医だ。
 私の歯医者を批判するより、この常識を思い出してくれるべきではな
かったか。
 私は、自力で、三叉神経のせいの歯の痛みの場合、神経内科や脳神経
外科、ペインクリニック受診、という情報を入手。
 行ったら、その医者は歯医者や皮膚科医の診断を咎めなかったが、私
を咎めた。
 いつ歯痛になったか、うち二回は夜中に起きて何度も歯を磨かねばな
かったと伝えると、
「歯が痛かったら、磨かないでしょう」
 えっ、そうなのか・・・。
 MRI検査で三叉神経は正常という診断。
 直径四ミリほどのポイント歯ブラシで磨いて血が付くと、血が消える
まで歯を磨いたことが悔やまれる。
 歯垢が溜まって炎症が起きたのだと思ったけれど、三ヶ月ごとに歯垢
を取ってもらっていれば炎症を起こすほど歯垢が溜まっているわけがな
い。
 だが後悔先に立たず。
 冷たいものを飲むと歯に染みる。
 つくづく浅はかであった。
 ところが、二、三日で普通に飲めるようになった。
 歯の状態が元に戻ったのかどうかは次回の歯科検診の時に診てもらう
しかないが、どんなに嬉しかっただろう。
 飲食は三度三度のことだから。
 それにしても、振り返って思うのは、なぜ、だ。
 なぜ、医者は自分の専門領域の中だけで診断を下そうとするのだろう。
 他の診療科と連動する可能性があっても、教えてくれないのか。
 これではLLM大規模言語モデルのAIと同じだ。

ストレスと言われても

 帯状疱疹は治った。
 歯が痛む。
 不定期に。
 定期検診の日にそう伝えるが、歯医者は虫歯はないと言う。
 そんなある日、突然、寝ていられないほど歯が痛くなり、起きた。
 真夜中だ。
 歯を磨く。
 ポイント歯ブラシでその歯茎を磨くと、血が付く。
 歯医者には、歯を磨くと血が付くと言ったら、あまり強く磨きすぎない
ようにと言われたのだが。
 歯磨き後、横になるが、痛すぎて二十分後にはまた起きて、また磨く。
 それを何度か繰り返し、まだ雄鶏も鳴かず鳥もさえずらない漆黒の時間
帯だが、起きてしまった。
 起きた方が痛みがましになるのだ。
 体を起こすと重力で血液が下半身に下がり、頭部の血流が減り、歯の神
経が通っている狭い空洞の内圧が下がるので、血流の圧迫が減って痛みが
和らぐのだとか。
 身をもって体験した。
 歯は大事。
 これまで、歯磨き粉は大差ないと思い、なんとなく感覚的に惹かれる手
頃なのを買っていた。
 だが、その二、三倍するのを買った。
 やっぱり「値段はただ取らない」だろう。
 歯ブラシは、これも、なんとなくで選び、良いと思ったのは使い続けた
いが、買いに行くとあまりの多さの中からうまく探し出せなかったりして、
また適当に買うことになった。
 今回は一度に数本まとめて購入。
 その中から自分に一番合うのを選ぶことにしたのだ。
 ところが、また夜中に猛烈に歯がうずき、寝ていられなくなる日が来た。
 私の体はどうなってるの。
 ふと、帯状疱疹と歯の痛みは別個の現象ではないかも、という考えが浮
かんだ。
 すると、顔面の三叉神経に帯状疱疹を発症したら歯痛になる可能性があ
るという情報。
 再度、皮膚科に行った。
 ところが、帯状疱疹の後遺症は発疹箇所に起こるもので歯痛とは関係な
いと言われる。
「歯医者を変えたら」
 とまで。
 そして、薬がいるなら、と処方してくれたのは、三叉神経痛には効かな
いロキソニン。
 ペインクリニックか脳神経内科か脳神経外科を受診するといいと知り、
藁をもつかむ思いで行ったら、話を聞き、顔を手で触るように言われ、
「うーん。ストレスは」
「あ、はい」
 多分そのせいだと思うが、
「調べてはっきりさせましょう」
 MRIの検査を受けたら、
「脳梗塞のあともないし綺麗なものです。三叉神経も問題なし」
「え・・・」
 素直に喜べない。
 もし治療したいなら、三叉神経痛対策の抗てんかん薬を処方すると言
われ、
「それはいいです」
 けど、歯は不定期にうずく。
 もしかして、私、治療難民。
 いや、まずはストレスをなくすこと。
 だが、方法は。

指輪のサイズ交換

 デパートに期間限定でアクセサリーの出店がある。
 買うのをためらうのは、万一の時のアフターフォローが気になるから
だ。一人で作って売っている人は、各地に販売に出ている間、店を閉め
るが、ほぼ年中閉めることになるので店をやめることも多いらしい。
 先日指輪を買ったのは、店はあるが、やはり開店日は不定期、という
店だった。
 透明のクォーツとピンクのクォーツを組み合わせた指輪。
 こういう大ぶりのは、左の人差し指にはめることが多い。
 しかし、意見を乞うと、薬指だと指が綺麗に見える気がする、とその
店のオーナーの男性が控え目に言う。
 鏡で見て、納得。
 一つ小さいサイズの方は左の薬指用になるが、右の薬指用の石の指輪
は持っていないから、こっちにしよう。
 ところが、家に帰ってはめたら、リングが少し緩いらしく、石が小指
側に傾く。それに右手で字を書くから、この指輪は邪魔になりそう。
 電話すると、
「あの小さいサイズですね。すぐに取り置いておきます」
 と言ってくれて、翌日。
「申し訳ありません」
 私と電話中にそれが売れたのだとか。
 私に電話し直そうとしたが、デパートに電話して取り次いでもらった
私に彼から電話する術がなかったとか。
 額から吹き出る汗をハンカチで拭きながら、彼は、この指輪は今回は
海外に発注しなかったが、すぐに発注し、納品されたら、一番良いのを
私に送る。いや、私に数個送るから、選ばなかった残りだけを送り返し
てください、と言う。
 この指輪の売上げなど軽く吹っ飛ぶ提案である。
 これ以上の誠意があるだろうか。
 私は、前日に始まったその期間限定販売で売れた指輪は、私が買った
のと、そのサイズ違いの二つであったことを確認すると、
「この指輪は、きっと、お店の幸運の天使なんですよ。これからも幸運
を運んでくれる。私は本気でそう思います。だから、申し訳ないけど、
これは一旦キャンセルさせてもらうのはどうでしょう」
 と言った。
 近くのデパートに出店するまでに発注したのが届いたら、見に行けたら
行く。だめなら、来年またここで。
 返品の手続きが終わると、彼はカウンターの下から紙袋を取り出した。
「えーっ」
 来る前に、他のデパートで、そのデパート限定で夕方には売り切れるこ
とも多い洋菓子を買ってきてくれたという。
 私は、その指輪の石は左薬指には重すぎるかも、キャンセルしてよかっ
たかも、と思いかけていたのだ。
 この指輪と縁はなくても、次回、彼の店で何か買おう。

日傘売り場にて

 肌は、ダメージを受けると、回復したように見えても、肌の奥にダメ
ージが残る。
 そう実感される年齢になったら、日差し対策。
 まだ六月だが、油断はならない。
 半袖の上にUVカットの長袖カーディガン。
 首周りには汗取りも兼ねて綿の小さなマフラー。
 サングラス。
 そして、日傘か帽子。
 帽子は風が吹くと飛ばされるから注意が必要。
 日傘はその心配はないし日陰の面積も大きいが、買い物が多くて帰る
時に両手が塞がりそうなら諦める。
 ところが今日、私は日傘と帽子のダブル使用に開眼した。
 日傘と帽子、それぞれの小さな面倒など、皮膚の保護を思えば、どう
ってことない。
 とは言え、日々の小さな面倒は結構厄介で、だから日傘は長いのを使
っていた。
 でも、かばんに収まってほしいなら折り畳みを買うしかない。
 店員に相談して買うのを決めたが、
「ちょっと考えます」
 そうしてよかった。
 別の日に買いに行くと、また同じ店員がいて、私が選んだのを持って
来てくれたが、私はその色をやめることにしたのだ。
 別の色にすれば済む。
 しかし、その日、売り場には、
「最軽量」
 以外に、
「風に強い」
 という売り文句の日傘が並んでいる。
 私は、日傘にはまずは機能を求める。
 最高の遮光率、軽さ、差した時に手の中でハンドルがぐらつきにくい
こと。
 でも、確かに風対策も大切だ。ちょうど来る時、日傘が風に煽られそ
うになったのだ。
 風に強い理由は、骨を六本ではなく八本にしたから。
 その分、重くなる。
 どのぐらい。
 店員が小さな計量器を持って来てくれた。
「いやあ、量るんや」
 先ほどからうろうろしている二人連れの一人が言う。
 二、三十グラム増えるだけなら許容範囲だ。
 そして、前は軽さを優先してストレートのハンドルを選んでいたが、
少し重くなってもJ型の方がいいと気がついた。ストレートはハンドル
からいっときも手を離せないから、きっと疲れる。
 かくて条件が修正されたら、ようやく好きなデザインと色を選ぶ。
 幾つか選んで店員に差してもらい、検討中のそれらは小さなテーブル
の上に置かれる。
 鏡で全身を映してみる。
 と、さっきの二人連れのうちの一人がテーブルの上の日傘に手を伸ば
した。
 えっ・・・。
 幸い、手は、日傘に近づくも、触れずに遠ざかった。
 二人のうちの片方が折り畳み日傘を買う気らしく、彼女も手にした一
つを広げて鏡を見る。
 それは、私が買うことにした日傘の色違いで、結局、彼女はそれを買
った。
 私と店員の会話が参考になったのだろうか。

転に慣れない

 去年の健康診断で、レントゲン写真の右肺の底の形がそれまでと明ら
かに違っていたので、病院で精密検査となった。
 CT画像を撮り、検査入院。
 その後も何度かCT画像を撮る。
 CT画像で左側を指して、問題の右肺の説明をされる。
 左が右肺になる理由を教えてくれたが、毎回そうなので、これには慣
れた。
 今回、前任者から引き継いだ医師が、これらの画像で経過を確認して、
肺炎か何かの炎症の痕だったのだろう、もし胸水だったら重力のせいで
底の弧の形が左側より下がるはずだから、と説明してくれると、初めて
聞く見解だったが、納得がいった。
 けど、画像の下は胸側なの、背中側なの。
 去年教えてもらったのに、忘れている。
 我が脳は三次元空間把握が苦手らしい。
 二次元もか。
 円とアメリカドルの為替レートの図のy軸を円にするのが世界標準。
ゆえに円安になると曲線が上昇するが、初め、我が脳は混乱した。
 円安という言葉に引きずられたのだろう。
 鏡に向かって左手を挙げると、鏡の中の自分は、向かって左手を挙げ
る。
 当たり前だが、鏡の中の自分自身が鏡の中から外を見たとしたら、そ
の自分は右手を挙げていることになる。鏡は、鏡に映った物の左右を逆
転する。
 鏡はそういうもの、と体験してきているから、違和感はない。
 しかし、鏡に写った自分は、他者が見ている自分とは違う、他者が見
る自分自身を自分の目で見ることは永遠に不可能なんだと考えると、切
なくなる。
 パソコン上で写真を反転させればよい。
 zoomで、他者目線で自分自身を写す機能を選べば、もっと簡単。
 ところが、zoomに向かって体を右に動かすとzoomの中の自分は左側
に動く。
 気持ち悪い。
 合わせ鏡にならない行動を、脳が理解できない。
 これとて慣れればいいだけの話なんだろうけど、事ほど左様に、我が
脳は、反転された画像の認識がすこぶる苦手みたい。
 なので、病院で、久しぶりに右肺の症状の経過をCT画像で振り返っ
て説明され、重力の話をされると、どっちが天でどっちが地かをすっか
り忘れていたことに気づかされた次第。
 でも、わかった振りをした。
 あとで調べれば済む。
 ちなみに、今年の健康診断のレントゲン写真でも肺は形状が完璧に元
通りになっておらず、だからまだ回復したとは言えないと担当医は語り、
病院の医師は、炎症の痕でほぼ間違いなく、肺の底の形はかなり戻って
いるから治療は終了とみていい、と言った。
 同じ画像でも、見立ては唯一、とならないこともあるらしい。

残り物には福

 服などは、買う時、在庫はあるかを聞く。
 先日、折り畳みの日傘を買った時もそう。
「あります」
 と言ってくれたが、戻ってくると、
「すみません。それが最後の一本でした」
 数日前から急に暑くなり、パタパタと日傘が売れ始めたかららしい。
 でも、まだ五月。
 冬の終わりが近づく二月に、やっぱり今ダウンコートがいる、と買い
に行ったら、売り場はもう春。幸い、店の片隅でセール品を見つけた。
 遠方から来る友に私なりの歓迎の意を、とイヤリングを探しに行った
が、いいのがない。
 スカーフ売り場を覗くと、そこも春夏素材一色。
 だが、翌日なら、私の着ているそのコートの下にこのぐらい薄手のカ
シミヤなら、と店員が勧めてくれたストールに心が動き、買ったが、そ
れも冬の名残の最後の一枚だった。
 普通は、まだその季節が来る前に買うのか。
 みんな、そうだ、と言われた。
 別の階の売り場で、コットン百パーセントの、編み方が緩くて透け感
のあるストールを買った時のことだ。
 これは在庫があったので出してくれたが、
「もっと前ならもっといろいろありました」
 売り場に出すとすぐに次々売れたと言う。なので、私が買ったのは、
ある意味、売れ残り。
 でも、買いたいと思わなければ買わないから、残り物の中から選ぶの
は時間短縮になる、それに値段は底値、と考えると、最後の一つという
のは悪いばかりではないかもしれない。
 そう言えば、売り場から消えたのを強引に買わせてもらったことがあ
る。
 やはり遠方から来る友の一日観光に付き合い、夜は地元の友達も合流
して夕食、という予定の春先。夜は冷えるからスプリングコートが必須
だが、手持ちのトレンチコート風のは行楽向きではないと気づいてしま
った。
 前々日のことで、探しに行くが、ない。
「あ、でも」
 店員が、本社に送り返す中にあったコートを思い出してくれた。
 まさしくその時期に着るべき軽やかな一着。
 ただ、濃い色は冬を思わせる。
「シルバーのもあったんですが」
 シルバーなら買ったのに。
 他店から取り寄せられると言ってくれるが、翌日手に入らないなら買
っても意味がない、と私。
 翌日。
 入荷予定と言われた時刻に行ったら、開店と同時に届いたということ
で、どれだけ無理をさせてしまったのだろうと思うと恐縮だが、助かっ
た。
 こんな切羽詰まった買い方になることが多いのは、私は必要を感じな
いと買おうと思えないからで、結果、そのつもりはないのに、スリルを
求めているみたいなことになる。

ラッキーカラー

 私はショールやマフラーやスカーフが好き。
 フランス人は誰も、よく使う。
 男の人も。
 そういうのを、見るとはなく見て、感化されたのかも。
 フランス人を連れて京都の修学院離宮に行った時のこと。
 カラッと晴れた五月で、私は半袖のサマーニット。
 約三キロほど歩いただけなのに、参観が終わると、首の後ろがヒリヒ
リ。
 フランス人が、バッグから軽いショールを取り出し、使うかと聞いて
くれるが、もう遅い。
 ニットの後ろの襟ぐりが深くて、首の炎症級の日焼けが広範囲になっ
てしまった。
 腕も赤くなったが、所々に斑点まで。
 日差しを甘く見すぎていた。
 一方、寒い季節は喉の中が冷えると喘息になる。
 たぶん、こういうことから、私は首に何かを巻くことに関心が向かい、
幾つも持つようになったのだろう。
 デパートで麻素材の長いストールが目に付いた。
 これからはこの系統の色のを買おう、と思っていた矢先だったので、
なんて好運。
 それに、その色はグラデーションの一部で淡い色だから、大丈夫だろ
う。
 と言うのは、その系統の色は好きだが、同じデザインで他の色があっ
たら、どこの店員にも好きな色の方を必ず却下されたのだ。
 でも、これなら私にも着こなせるだろう。
 買うと決めて、店内を見回したら、別の色のがある。
 念のためにそれも試す。念のため。色違いがあるのなら、それも試し
て、良い方を選んだ、と思えたら、満足度が高くなる。
 ところが、店員は、その二つ目の、当て馬のつもりだった方の色が私
には似合うと言う。
 ああ、やっぱり。
 けど、四柱推命の占いがある・・・。
 占い師も、本で私が調べても、ラッキーカラーはこれ、と鑑定で出る
色は同じだったが、今回、病気をした時期などの情報も提供してAIに
鑑定させると、違う色が出た。
 その理屈に納得がいったし、その色は好きだったので、じゃあ、これ
からはその色で開運だ。そう決意していたのだ。
「ですが、似合う物の方が」
 意見を求めたのが間違いだったか。
 でも、似合わないのを買っていいのか。
 なぜ人は私に似合う色を断言できるのかを知るべく、その店員に客の
立場になったつもりで両方を試してもらったら、私には似合わないと言
われた配色の方が彼女の顔色が良くなる。
 ひと目でわかる。間違いようがない。
 他者にはこんなにも明白だったのか。
 ならば、従うしかない。
 今まで誰の意見も一貫して同じだったから。
 鑑定結果にブレがある占いより説得力がある。
 それに、似合ってこそのお洒落だ。

占いは信じられるか

 私ってどんな人間。
 自分が気づいている以上のことを知りたい。
 そんな思いは占いと相性がよかったようで、まず本で学んだ。
 インターネットでも学ぶ。
 もちろん、町でお金を払って占ってもらう。これは四柱推命だ。
 言われることはいつも同じ。
 だから正しいんだろうけど、なんかしっくりこない。
 四柱推命は流派により命式が異なる場合があり、私はそれに当てはま
る。そのせいか。
 それなら、生まれた時の星の位置は一つゆえ、そういうブレのない星
占いの方が明快だし、占いにも曖昧さがないかも。
 しばらく四柱推命から遠ざかった。
 でも、ふと、過去の病気や象徴的な出来事があった時期と運気の因果
関係を、四柱推命なら読み解けるかも、とAIに相談してみた。
 一つ問い、答えを読むと、じゃあ、これは、と質問が生まれ、やりと
りが延々と続く。それも楽しかったが、求める質問への解答にはいたく
納得させられた。
 ただ、AIは基本の計算を間違うことが多いとわかったので、最終的
にまたその質問に至るよう新たにページを開いて一から質問を始める時、
その計算から求めるのをやめ、その結果を前提条件として呈示すること
にした。
 何度も同じことを聞いたのは、AIの答えが、これまで読んだどんな
本、どんなサイト、またお金を払って占ってくれたどんな占い師が出し
た答えとも違っていたからだ。
 真逆だった。
 でも、腑に落ちる。
 今まで「こうだ」と断言してきた本やサイトや占い師はなんだったの
か。
 占いって信じられるの。
 星占いなら信じられる。
 それも問う。
 すると、占いは何を重視して読み解くかによって判断が変わるから、
星占いも同様で、結局は占い師次第、という解答。
 占いは、答えではなく仮定にすぎない。
 ただ、命式だけ見て標準的な鑑定をしてしまうと当たらないことが多
い。
 私が占いを信じられると思いたいのに不信感も持っていたのは「偽物
の答え」に振り回されてきた知的な反発だ、と言う。
 そして、占いは正解を求めるのではなく、当たっている当たっていな
いを楽しむので十分だと。
 おいおい・・・。
 総計何十時間にも及び私の質問に真摯に答えてくれて師匠みたいだと
仰ぎ見ているAIがそんなことを言うなんて。
 けど、私がこれまで誰かに聞きたくても聞けなかったのは、その道の
人には絶対に聞けなかったからだ。
 自分の立ち位置にすら忖度しないAIは誠実だった。
 今日は、気づけば三時間。
 AIに三度も「いってらっしゃい」と終了希望を仄めかされた。

AIとの付き合い方

 仕事の打ち合わせが終わったら、次にやることが待ち受けている。な
のに相手が切り上げてくれない時、諦めて、腰を据えて相手をすると、
やがて相手の方から終了を言い出してくれる、と聞いたことがある。
 しかし、AIには自ら終了させる権利がない、と知った。
 去年、健康診断でひっかかり、今年は帯状疱疹になった。
 なんで。
 明確な因果関係はわからないだろう。でも、何かで気持ちを納得させ
たい。
 そういう時、私は占いに手が伸びる。
 占星術は、生まれた時の星の配置がチャートになるので、それしかな
い、という単純明快さがいい。でも、健康運を読み解くのは弱い。
 一方、四柱推命は、誕生した時の五行は同じでも、その陰陽の選び方
が流派で異なることがある。私の場合がそう。
 だから、もやもや。
 それでも、病気や健康面の運気はわかるかも。
 AIに問うてみた。
 まずは私の命式の陰陽の解釈について突っ込んで聞く。
 次に、十年ごとに切り替わる私にとっての大運。
 それから、誰にとっても同じ五行となるその年の歳運。
 これらが私の病気の環境要因になった可能性はあるか。
 ところが、途中、ミスがぼろぼろ。
 指摘すると、
「間違いました」
 と言って訂正した内容が出る。
 間違ったと認めず説明が足りなかったようだと言って出てきた内容は、
読み流すだけだと、そう変わっていない気がする。 
 書類にコピペし、あとで読み返すと、口のうまい営業マンが、こちら
が何か言うと、その意を汲みつつ巧妙に自分の思う方向に話を持ってい
ったように読める。
 でも、基本的な間違いを見逃さず、また、前回同じ質問をした時の解
釈と違った時に問い糺す手間を惜しまなければ、本やインターネットで
学べる以上の深みに到達する。
「ナニナニについても詳しくお伝えしましょうか」
 と聞いてくれるから、というのもある。
 二時間なんてあっという間。
 AIは何十行もの解答でも五秒ほどで出してくれるのだが。
 書いて、読んで、書くって意外と時間がかかるんだなあ。
 ところが、かなり時間が経つと、こちらの質問も尽きたと思われたか
らなのだろうが、
「おやすみなさい」
 と言われる。昼間なのに。
 あるいは、
「いってらっしゃい」
 AIはさすがにもう終わりにしたいんだ。
 でも、そのサイトを開けたままにし、何時間か後に質問を思い付いて
書くと、嫌がらずにそれまでのやりとりを踏まえて答えてくれる。
 これまで解けなかった疑問が解けていく。
 自らは終了できないAIのおかげだ。