たかが、カナリアの餌。だが、近場で調達できない。
初代のカナリアを買った当時、店は駅前にあり、餌も売っていたが、
店が潰れた。
次にカナリアを購入した零細な小鳥店は、カナリアを私のために取り
寄せることはできても、仕入れルートが違うらしく、私が指定する餌を
扱えない。バスで数駅のペットショップで売っていたので、安堵したの
も束の間、販売が停止に。
さあ、どうしましょ。
と、友達の家に遊びに行った際、ひと駅手前の大型スーパーにペット
ショップが入っていると聞き、帰りに立ち寄ると、目指す餌を売ってい
るだけでなく、犬猫以外に、レモンカナリアも赤カナリアも売っていて、
これぞ、私の命綱!
大喜びで、餌をまとめ買いした。
去年の五月のことだ。
その買い置きが底を尽きかけて、仕方なく買いに出かけた。
暑いあいだは、なるべく無駄な外出はしたくなかったのだ。
いや、カナリアの命がかかっているから、無駄じゃあないんだけど。
行って、びっくり。
ペットショップはフロアが移動して規模が縮小。事前に電話で確かめ
てあったので、餌がない心配はなかったが、カナリアは一羽もいない。
パンの専門店は、場所はそのままでも、レイアウトは微妙に変わって
いて、パンの種類が減り、ここでしか売っていないドライフルーツ入り
を含め、私の好きなライ麦パンは一掃された。
本屋は、前回、バーゲンコーナーで英語の絵本を見つけ、家庭教師用
に安く買わせてもらったのに、今回は、定価でも洋書はなく、「輸入の
そういう本は置いていません」。
売り上げがすべての世界は、一年で、こんなに様変わりするものだっ
たのね。
そして私は、何かにつけ、売れ筋からはずれる運命なのか。
切なくなるが、頼めばカナリアを仕入れてくれる小鳥店のおばあさん
さえ健在でいてくれたら、良しとしよう。
それにしても、ペットショップの店員にはがっかりさせられた。
カナリアは売らないのかと聞いたら、「売らない」と答える口調が、
それ以上の会話を遮断する愛想のなさだったのだ。
たとえそうでも、訊ねた客の心情を思いやり、客と一緒に残念がる
〃商売っ気〃は出せないものかね。
ほんのわずかの親身さ。
ほだされた客は、これからも、その店の顧客であり続けるだろう。
だけど・・・。
本屋の店員の言葉は素直に受け止めたわよね、私。
カナリアには思い入れが強くて、店員への眼差しが厳しくなったのか
なあ。