中国系フランス人

 知人を含むフランス人の男性三人と、大阪を観光した。
 私は、来日した外国人や、日本在住の外国人に付き合うことがあるが、
オランダ人の女性二人が来日した際、「コーヒーを飲みたい」と言われ、
彼女達の生活レベルから判断して、ちゃんとした喫茶店に連れて行こう
としたら、「マクドでいい」と言われ、困惑した私と路上で口論になっ
たような経験を経て、「不必要に散財しない」のが彼らのルールと学び、
その発想で彼らに同行するようになっていた。
 が、今回の旅行者は初めから様子が違う。
 まずは、「はい、おみやげ。今、そこで買った物だけど」とデパ地下
で購入したフランス製の高級ワインを手渡された。
 もっとも、同じデパート内のバーバリーで、各自が自分達用に服を買
ったらしく、紙袋を提げているのは、「フランスより安いから」。
 知人が持っているデジタル一眼レフカメラは、秋葉原で買ったが、こ
れも「フランスで買うより安いから」。
 じゃあ、基本はやっぱり堅実路線よね、と安心したら、昼間っから夕
食のような豪勢さだし、大阪城までタクシーで行こうと言うし、それは
JRの二週間フリーパスを持っている彼らには不要な出費と押しとどめ
るも、天守閣に登って町を見下ろすだけのワンポイント観光。目の前が
乗り場の水上バス遊覧は、連日歩き疲れているのでちょうどいい、と休
息目的。
 再びタクシーと言うので、タクシーに乗車。
 着いたら、お釣りは「チップです」。
 運転手さんと私は「えっ」。
 いや、私も、フランスならチップは渡すけどサ。
 アメリカ村で、たこ焼きを賞味。
 道頓堀では、かに道楽やグリコの看板を写真に収め、「京都で見つか
らなかったから、夜はここでふぐ料理だ!」。
 駆け足の観光に見えて、いいのかなあと不安になるものの、要所はし
っかり押さえているから、それでいいのかも。
 食べ物は、私と会う前に寿司とお好み焼きと餃子を制覇していて、名
物は全部食べるぞ、の気迫に満ちている。
 旅行という非日常に、しみったれない。
 そういうのは田舎モンっぽいと感じて否定的だった私は、考えを改め
たくなった。
 もう一度パチンコをすると言う彼らは、前夜、それぞれ、二万円、一
万円、七千円、儲けたそうで、そうと知ると、散財するほどお金の神様
に愛されるような気もしてくるし。
 彼らは、フランス生まれのフランス国籍だが、DNAは中国人。
 もてなすべき立場の私は、一銭も払わせてもらえなかった。