今日、食料品を買いにスーパーマーケットに行ったら、ブラック・フ
ライデーのお買い得品があるのか、土曜日の昼間はいつもこうなのか、
レジには長い列。
レジと商品の陳列棚の間は、買い物客が行き交う通路だ。
しかし、レジ待ちの列ができると、その通路まで詰めて客が並ぶので、
買い物中の客は通路を行き交えなくなる。
でも、そこを通りたいだけだとわかると、並んでいる人はカートをず
らしたりして通してくれる。
今日もそうやってレジ待ちの列を横切ったら、
「ちゃんと並べや」
というような男の声が聞こえてきた。
振り返ると、商品の棚の方まで伸びた列の中に高齢の男。
誰に文句を言ったのだろうと見回すと、その男が並んでいる目的のレ
ジと向かい合ってもう一つレジがあり、そちらは客がおらず、通路から
そのレジに向かいかけている年配の母親と娘であった。
彼女達が立ち止まる。
男よりもっと前の、通路あたりまで進んでいた列の中の女性達が、
「そっちのレジはいいんですよ」
と声をかける。
どちらもセルフレジだが、行列ができている方は現金でも支払えるが、
客がいないレジは現金は不可で、複数の女性の声にそう励まされたのな
ら、あの男は間違った非難をしただけなのだとわかるから、親子は堂々
とレジに進めばいいだろうに、有人レジの方に行こうか、みたいなこと
をひそひそ話す。
ただ、そっちのレジはいいという声を聞いて、列の中から、その現金
不可のセルフレジの方に進む客が現われたので、この長い列には、本来、
その列に並ばなくて良かった客が混じっていたのかもしれない。つまり、
レジの直前でどちらのレジに進むかを決めるY字を守らなくてはいけな
いと思い込んでいた人達、ということだ。もちろん、この小さな騒動で
はたと気がつき、クレジットカードで払えば並ばなくて済む、と考えた
人達もいるだろう。
なんにせよ、非難された親子は、あの時点で、一番正しい判断をして
いた。
なのに、彼女達は有人レジに向かった。
面倒だったのだろう。
面倒。
これにはいろいろな意味があるが、嫌な気分を避ける、というのもあ
るのではないか。
たとえ相手の非難が的外れでも、投げつけられた言葉は耳に残る。心
に痛い。
さっさとその場から離れることだ。
そうしたくてもできないことも多いから、できる時はそうする。
あの親子は正しく面倒を避けた。
私は、嫌な気分をまだ手放せていない。
ひとごとなのに。