専門店の、しろうと知識

 私のフランスの友達にフランスで犬を買ってもらえないか聞いてほし
いと親から頼まれたんだけど、と、先週、友に言われた。
 実家にはすでにオスとメスがいるのだが、フランス原産の犬なので、
どうせならフランスからオスを一匹取り寄せたいとお父さんは閃いたそ
うな。
 ブリタニー・スパニエル。
「どんな犬」と聞いたら、
「えーっ。このぐらいの大きさかなあ」と友は手を広げるばかりで、そ
れでは、全然、伝わりませーん。
 そのお父さんには、夏、持ちアパートの屋上という特等席で花火を見
させてもらったりしているので、できるかどうか調べてみた。
 すると、動物検疫所に定められた検査や証明書の発行機関が厳格で、
かなり面倒。
 これは、犬を買う条件として、必要経費の上乗せで請け負ってくれる
ブリーダーを見つけるのが一番だろうな。
 ブリタニー・スパニエルの専門サイトで、パリに比較的近い地域のブ
リーダーを選ぶと、私は全部のホームページに目を通した。
 ブリーダー選びが入手する犬の質を左右すると思うと、そこで手を抜
くわけにはいかないではないか。
 ところが、良さそうなブリーダーを五つ候補に絞ったら、そこから一
つ選ぶのは、購入者であるお父さん。
 そのお父さんに納得して選んでほしいと思うと、ブリーダーのホーム
ページを翻訳しなくてはならないし、犬の写真を貼り付けたりする必要
もでてきて、さっさとやっつけようとしたら、納期の迫った仕事に追わ
れているみたいにテンパって、睡眠時間も随分削られてしまった。
 おかげで、ウズラや雉子などの鳥の狩猟が得意な小型狩猟犬だとか、
血統書付きでないとフランスでは狩猟の競技に参加できないとか、本物
を見たこともないのに、私はいきなり「ブリタニー・スパニエル通」。
 未知なる世界が広がるのは楽しい。が、急激にのめり込んだための脳
疲労は著しく、四十九ページに及ぶ資料を送ってしまうと、すぐに園
芸用の土を買いに行った。
 先日、家の近くの小さな店で買おうとしたら、店員が、自分の店に置
いている土の違いを説明できなかったのだ。
 で、少し離れた大きめの店に行ったのだが、今回も、袋の裏書きを読
んでも差がわからなくて首を捻る私と同レベルの店員しかいない。
 単に「物」を売っているだけの店が多いなあ。
 まあ、だから、さびれているわけだが。
 私は、値段はただは取らない、という言葉を信じることにして、高い
方を買って帰った。