口呼吸

 土曜日から三連休だが、この三日間、家から一歩も出ず、風呂にも入
っていない。
 風邪を引いたのだ。
 私の風邪はいつも咳症状、と思っていたのは、そうではなく、咳はア
レルギーが原因と判明したのは、つい先日のこと。医者の処方で咳が完
治したので、その見立てを疑ってはいないが、今回、風邪を引いて、
「おお、これが本物の風邪であった」
 とその違いを再確認できた。
 鼻が詰まる。
 が、鼻をかんでも、洟(はな)は出ない。
 必然的に口で息をすることになる。
 怖いのは夜眠る時だ。
 鼻が詰まって、鼻呼吸できない。起きている時は、仕方なく、意識的
に口呼吸になるにしても、眠ってしまったら、いつも通り口を閉じるの
ではないか。そのままいったら・・・窒息死?
 そんな不安が頭をよぎり、うつ伏せに寝てみた。
 大人の女の人でうつ伏せ寝ができる人っているのかなあ。
 私は、胸のボリュームがたいしてなく、ブラジャーなしでも胸が垂れ
ないので、個人的にはいたく感謝の体型であるが、そういう私ですら、
うつ伏せ寝すると胸が邪魔だと感じる。
 ならば横向き寝、という発想が有効そうだが、これは過去に何度か試
して、普通なら一分とかからず寝付けるところが、慣れない体型のせい
で悶々として寝そびれかけることがあって以来、やっても無駄、と諦め
た。
 よって、きのうは、いきなり、うつ伏せ寝。
 案の定、大いなる違和感を覚え、ああ、今から寝付けない時間がスタ
ートするんだわと身構えるも、ほどなく記憶がなくなったのは風邪薬の
おかげか。
 夜中に二、三度、脇に置いておいたティッシュに手を伸ばした記憶を
辿ると、その時もう、私のからだは、今朝目覚めた時同様、しっかり天
井を向いていたから、たぶん、器用に首だけ横向きにしたのだろう。
 まあねえ。
 無意識の寝返りまでコントロールできるわけはなさそうだもの。
 そう、無意識をコントロールするのは難しい。
 というか、できないのではないか。
 鼻が詰まっていても普段通り口を閉じてしまうと想像したのは、だか
ら、あながち荒唐無稽な妄想、でもなかったのでは。
 ただ、さすがに私の習慣に任せていたのでは私の命にかかわるので、
生存本能が口呼吸を強行させてくれたのであろう。
 じゃあ、今夜も心配なしね。
 だろうけど、こういう時は電車の中で居眠りするような眠り方が一番
安心できそうな気はする。
 あ、昼ご飯のあとに風邪薬を飲んだから、居眠りしたくなるかも。
 今日は、怠惰な昼寝を積極的に歓迎しよう。
 結果や、いかに。