必然を待つ

 友達と、大阪のどこでランチしよう、という話になり、私が、まだJ
R大阪三越伊勢丹に行っていないと言ったら、
「五月の開業の時の混雑は遠方から来た人が大半で、大阪の人はほとん
ど行かなかったんですって」
 と友は言い、
「それに、デパートは、私の友達も、いつも買う決まった売り場にしか
行かないって言ってる」
 と言葉を続けた。
 ああ、そうなんだ・・・。
 私は “買うならデパート派”。
 が、これでもう、彼女に向かってそう公言する機会は永遠に失われて
しまったな。
 しかし、実際のところ、私のようなデパート好きは私の周りにもそう
いなくて、私が変なのかと不安になってくる。
 人は人、なのにね。
 いつからデパート贔屓になったのか、記憶はないが、特設の催事コー
ナーは別として、普通の売り場の商品は一定レベルの品質が保証されて
いるので、気に入る物を見つけることに専念できるのはラクだと感じる
ようになってからではないか。
 もっとも、定価でバンバン買えるわけはなく、バーゲン、あるいはカ
ード会員対象に十〜二十パーセント引きにしてくれる優待セール期間を
狙う。
 三越伊勢丹は、新たにカードを作るのが億劫だし、馴染みのデパート
で間に合っていますという気持ちもあるが、一番の警戒要素は伊勢丹
らではの「自主編集」かなあ。
 ブランドの垣根を超えたトータルコーディネイトをファッション雑誌
で見るのは楽しい。ためになる。けど、デパートの売り場で見せられる
となったら、話は別。
「ほら、こういうコーディネイトって素敵でしょう」
 と提案されるのを丸ごと受け入れるのでは、あまりに能なしじゃん。
 何より、伝わってくる「押しつけ感」が気に障る。
 たとえ私のファッションセンスが救いようもなくダサくても、自分の
頭で考えさせてよ。それを存分に楽しませてよ。
 お上からの押しつけに反骨精神逞しく抵抗してきた関西風土、という
のが信憑性ある歴史的事実かどうかは知らねども、実際に見に行く前か
ら、かくも強力なる拒絶反応に肩怒らせる私であれば、なるほど、まご
うことなき関西人の末裔かも。
 さて、ランチ目当てで三越伊勢丹初制覇を目論んだのは、友からさら
りと却下された。
 ま、行く必然ができるまで気長に待てばいいか。
 そう言えば、東京は出張という必然で足を踏み入れることになったが、
アメリカはまだ。
 距離の近さで大阪が有利とも言えないはずだから。
 先にどっちに必然が生じるかは、確率五分五分。
 決着のつく日が待ち遠しい。