崩れない陳列法

 夏の終わりは、夏物商品売り尽くし。
 大手スーパーの衣料品売り場に立ち寄ったら、夏物肌着が半額セール
中。
 それも、もともと定価の七掛けぐらいの赤札になっていたのが、レジ
に持っていくと、そこから半額になるそうな。
 汗がサラッと乾く素材らしいが、これから秋にかけて役立ちそうだと
思い、真剣に物色してみることにした。
 袋詰めの商品は、二つのワゴンの中にきちんと平積みされていたのに、
客の手でごちゃごちゃにされたとおぼしきカオス状態。
 この中から探すとなると、一度捨てた商品をまた手に取ることになる
かもしれない一方、あるのに見過ごし、買い損ねることも起こりそう。
 それでは困る。
 ほかに客はいなかったので、私は商品を一枚一枚手に取り、Lサイズ
で、かつ私が「買うかも」と感じた物をカゴに入れ、それ以外は、袋の
上部のサイズ表示が見えるよう、縦に立てて並べていった。
 こんな風に整頓しても、一目でわかるのはサイズだけだが、キャミソ
ールか、ノースリーブか、半袖か、七分袖か。そして何色かは、サイズ
を選んだあと、選択肢として浮上してくる内容である。
 それに、こう並べておけば、客は、自分のサイズのを引っ張り出さな
くても、その手前の商品を、箱に縦入れしたカードを繰るような感じで
手前に倒すだけで、スタイルと色を確認できる。
 私は、却下したLサイズを、あとでもう一度見直したくなった時に無
駄に時間を費やしたくなくて、つまり、私自身のために並べ直したわけ
だ。
 すべてを綺麗に並べ終わると、私は、カゴに取り分けた商品の中から
買う商品を絞るべく、隣の、違う商品のワゴンに移動した。
 その上に、商品を並べて思案する。
 あの色の方がいいかも、と思うと、後ろを振り返って、ワゴンに整頓
した中から見つけ出す。
 こうして、六着購入し、家で試着すると、着心地がいいので、翌日も
その売り場に舞い戻った。
 すると、私の陳列方法が、崩されずに、そのまま生かされている。
 ムフッ。
 ほうらね。女性客は、ワゴンの中を乱雑にしなくちゃ商品が選べない
ってわけじゃないのよ。
 選びたい物を選ぼうとしようとしたら、そうなることもあるだけのこ
と。
 だが、陳列方法が賢ければ、客は品位ある行為を保つ。
 私はその日は三着買い、数日後に売り場を通りかかったら、ワゴンは
別の場所に移動して一つになり、肌着はその半分しか残っていないが、
陳列方法は私が勝手に変えたまま。
 再び、自己満足の喜びが込み上げてきた。