今回、ブルターニュでは二軒の家に泊めてもらった。
最初に泊まったのは友達のおかあさん、マダムBの家。
まだ会ったことはないが、彼女との方がメールもSkype電話も頻繁
かつ濃密になっている。
友達は、結婚して、夫の仕事でアメリカ在住中。
私は、マダムBに、三日間家に泊めてもらえるかと訊ねた。
「え。たったそれだけ」
落胆して息を呑む。
「そりゃまあ、あなたにはほかにも友達がいるでしょうから・・・」
自分で自分を慰めようとするさまが健気(けなげ)で、心打たれる。
私は、その時まで、ブルターニュでは三軒の家に泊めてもらうつもり
でいた。
昔からの友達が、去年の夏、田舎に古い農家を買ったのだ。でも、手
紙に「再会が待ち遠しい」とあるが、「泊まっていって」という言葉は
ない。
彼女はパソコンを持っておらず、やりとりが手紙だけなのがまどろっ
こしい。
でも、じゃあ、改装中でも私を泊めてくれたがるはず、と想像するの
はやめにして、彼女とは一日一緒に過ごせればよしとしよう。
マダムB宅に五日間泊めてもらうよう予定を変更。
そのあと来た手紙に「まだ台所が使えない」とあったので、それなら
私を泊めるのは無理よね。
内装工事はなるべく彼と二人でしたいとは聞いていたけれど、行った
ら、中の壁も床も剥き出しで、台所もない。お湯も出ないそうで、ほと
んど工事現場。でも住んでいるのだから驚嘆だが、私としては安堵だっ
た。
自分の家よりよその家に私が泊まる日数が長いと知ったら、気分を害
されると思うと、誰の家に何日泊めてもらうかの調整は神経を使う。
それぞれの希望は聞いても、最終的に決めるのは私。
その時、私の心の中の優先順位があばかれる。
それを試練と感じるのは、たぶん、私が八方美人のせい。
それにしても、マダムBは、私から「三日間」と聞くと、心底失望し
てくれたので、私は考え直したくなった。
パリとブルターニュの往復アッシー君を申し出てくれたマダムDは、
私のパリ到着の翌日、ブルターニュに向かうのであれば、その方角にな
い彼女の家に泊まるのはやめて、私が払うからパリのホテルに泊まろう
と私が提案すると、
「どうしてもそうしたいなら」
あきらかに不賛成だと伝わる声で言うから、私は彼女の家で一泊させ
てもらうことにした。
思っていることは口に出して言ってみるもの、のようである。
ところで、十三日間のフランス旅行だと告げたら、マダムBから、
「短すぎる」
と悲しそうに言われた。
短いんだ・・・。