風立ちぬ

 インターネットの時代でよかった、と思うことがある。
 先日、男友達と映画を観に行く時もそうだった。
 帰郷する彼を花火に誘ったが、前日から実家だと言うので、その日は
早くから会うことに。
「だったら、映画に行かない」
 誘ったら、あっさり乗ってくれた。
 彼と会うのは、何年かぶり。
 映画館に行くのも、何年かぶり。
 候補の映画館は二つ。
 候補の開始時刻は三つ。
 彼が提案した待ち合わせ時刻から察するに、彼も、まず映画を観よう
という気なのだろう。
 オンライン予約はしないが、席の予約状況はチェック。
 出かける直前も。
 と、ふと、「口コミ」ページが気になって、見ると、私が考えている
開始時刻のシアターは、狭くて前の人の頭が邪魔になるし、端の席で見
ても同様で、後ろの席で見るのは家でDVDで観るのと大差ない、とい
う意見。
 似たような投稿がもう一本。
 その手の声をもっと探したいが、時間切れ。
 焦る。
 しかし、量ではあるまい。
 ようやくその口コミの適切さが納得いったのは、待ち合わせ場所に向
かう電車の中。
 男友達もその意見は一理ありそうだと言うので、第二候補だった、新
しくできた映画館へ向かう。
 そこのホームページは予約画面に入らないと座席の埋まり具合が見ら
れないのだが、チケット売り場に到着すると、画面の正面位置は、私達
が押さえた前から五列目以降は、全部売り切れ。
 でも、前の人の頭が画面にかぶることはなかったし、
「新しいと、座席が深々しているなあ」
 たまに映画館に行くという彼は高評価。
 カップルからひと席空けた席を選んだ私の勘も冴えていた。
 その席にはポップコーンを持った女性の一人客が座ったが、映画が始
まる前に飲食を完了してくれたのだ。
 ところが、その向こうの女性はポリポリ。ひと席分離れているので、
なんとか耐えられたけど。
 今は、自分のまわりにこういう飲食客が座る可能性が付きまとうのよ
ね。やっぱり、これからも、できれば映画館には行かないでおこう。
 ちなみに、観たのは『風立ちぬ』。
 喫煙場面が多すぎると日本禁煙学会から意見されたようだが、彼と私
が唯一残念に感じたのは、そこではなかった。
 十年後の主人公達の顔が、十年分歳を取っていない。
 話の流れから「これは十年後の場面なんだ」と理屈で自分自身に言い
聞かせないと、頭がこんがらがる。
 目からの情報に百パーセント頼り切れなくて、神経をつかう。そこに
まごつかされたのだ。
"アニメ慣れ"していなかったかなあ。