大晦日の出来事

 新年になってから、まだ、十分間しか外出していない。
 出していなかった人への年賀状を、朝刊を取りに行くついでに近くの
郵便局まで投函しに行ったきのうの朝の往復十分間ほどが唯一。こうな
ったら明日まで家に引き籠もっていたい気がしてきた。
 初詣に行かなくなって久しい。
 氏神さんにお参りに行ったら、なぜか参拝者が二人ずつ並んで長蛇の
列で、強い違和感に襲われ、別の日に出直すことにしてからは、人がい
る時は参拝しないことにしたのである。嫌な気持ちでお参りしても、い
いことはない。
 なぜ、嫌な気持ちになるのか。
 そこに人の欲を見るからだ。
 神様はサ、すごいんだから。隅の方で拝んでいる人にもちゃんと目配
りして、決して見落としたりしないんだから。
 それを、二人ずつなら神様は公平に福を与えてくださるだろうなんて、
浅知恵も甚だしい。一度に三人以上は無理だとは、神様も見くびられた
ものである。
 そういう俗にまみれるより、そうだ、大晦日の年越大祓式(としこし
のおおはらえしき)だ、と閃いた。初詣の前に、まずは過ぎた一年の感
謝をすることこそ道理であろう。
 大掃除も終えて、あとは年越しを待つのみという暮れ方。暗くて寒い
拝殿の中で大祓式に参加するのは身が引き締まる。普段にはない緊張感。
ただ、氏神さんと言ってもすぐ近くというわけではないので、しばらく
足が遠のいていた。
 この年末は二十九日から大掃除を始めたので、午後四時の年越大祓式
には余裕で行けるだろう。
 その大晦日の朝。
 母が、
「顔を洗っていたら、途中から水になった」
 と言う。
 私も、なんとなく、これまでのように正しい熱さのお湯が出ないよう
な気はしていたが、寒い冬だからそう感じるんだと自分で自分に納得さ
せていた。けど、そうじゃなかったんだ。
 が、もう正月休みだ。
 突然、一月六日が月曜日となるカレンダーが恐怖になる。それまでお
湯なし生活になるかも・・・。
 腹を括って、九時を待ち、電話したら、
「夕方五時以降でよければ伺えます」
 大祓式に行きたいし、されど寒し、と心揺れていた私に、神様はこう
いう形で正答をくださった模様。それでも、結局、大掃除は完了しなか
った。
 修理の人を迎えるために掃除したみたいになったが、それでいいのだ
ろう。
 大掃除の最中に抽選があった年末ジャンボの結果を見たら、三等三千
円に当選。
 初詣は、きのう、年賀状を出しに行った帰りに、郵便局のそばの小さ
い小さいほこらの神社にお参りしておいた。
 今年もきっと良い年。