損するゆとり

「投げやり」と「やり投げ」をよく混同する私は、前回号で「マニアッ
ク」を「アニマック」などとこの世に存在しない言葉に書き間違えた。
ブログの方は訂正したけれど。
 それに二月一日号なら、簡単な英語で理解できるクリスマスの歌を探
していたのは「先月」ではなく「去年の十二月」が正しいが、こちらを
訂正するのは・・・諦めた。
 ということで訂正報告から始めることになってしまったが、ペンタト
ニックスのCDが届いた夜のことである。
 CDを聴いてから、YouTubeで彼らのVTRを見た。
 初めてでもないのにいろいろ見続け、ようやくベッドに入ったら、い
つものようにはコテッと眠りにつけない。小一時間ほども目が冴え、眠
ってからも、夢を見ているような、思考しているなあと自覚し続けるよ
うな感じのまま朝に至った。
 就寝前にパソコンのような強い光を浴びると睡眠が阻害される、とは
こういうことであったかと深く反省。
 けど、いつものことなのに、なんで、あの日だけ神経が高ぶったのだ
ろう。
 彼らのVTRは、歌を聞き流すのではなく、映像もしっかり見たいと
思うからかも。
 彼らはYouTube用の公式ユーザー名を持っている。PTXofficial
いう名でアップロードされるのは、プロモーションVTRは当然だが、
もっとくだけた雰囲気のVTRも多数。
 新鮮なのは、歌のあとに、
「やあ、こんにちは」
 と彼らが画面に向かって今後のツアーやCD発売の紹介をし、チャン
ネル登録をよろしく、と言ってVTRが終わることだ。
 それにしても、垂れ流しと言いたいぐらいのVTRの数。
 普通は、無料の動画サイトへの露出はプロモーションVTRだけに制
限しようと躍起になるものだろうに。その場合の心理は、こういうサイ
トでしっかり堪能されたら、CDが売れない、コンサートに来てもらえ
なくなる、という不安や怯えであろう。
 ペンタトニックスは、本当にそうか、と自問したのかも。
 そして、YouTubeをプロモーション媒体として積極的に利用すること
にした。
 無料の情報発信をいくら増やしても直接売り上げに結びつかないとい
う意味では損な行為である。だが、それでファンが減るぐらいなら自分
達はその程度なんだと腹を括れたら、損は損でなくなるし、そう発想で
きる人は、損が得に変わるめくるめく魔法を体験することになる。
 怖れを動機として囲い込もうとするのではなく、自信と愛で裾野を広
げる。
 プラスのスパイラル。
 インターネット時代を逆手に取ったとも見えるけど。
 素晴らしいと思う。