たまにテレビで、
「あなたにとっての一曲は」
という街頭インタビューを見かけるが、ほとんどの人が即答するし、
つらい時にこの歌に勇気をもらった、というように理由も語る。
そうかあ。良い曲には素晴らしい歌詞がつきものなんだ。私はそう思
い込んでしまったのかも。
そういう目で見ると、前回一部訳したラ・コンパニー・クレオールの
歌詞は、あり得ないひどさである。
ただ、私が彼らに惚れた発端は、第一音目から私の心に活を入れてく
れるラテンの乗りのメロディであった。
それに歌詞も、
「うまくいくさ
うまくいく。
〜
泣かないで
うまくいく」
とか、
「もし人生が雨の時でも、
夜が怖くても、
そのために歌がある。
素晴らしい日々のために、
さあ、手を叩いて。
幸せが来るよ」
など、まあ許せる、というものも多い。
が、この歌詞のところに来ると必ず私の意識が引き寄せられる、とい
う曲はCDの中にあった。
前回訳した『仮面舞踏会』の中の、
「今日は自分がしたいことをしていいんだ。
〜
パートナーを変える理想的なチャンス。
〜
今日はキスしたい人とする。
今日はすべてが許される」
という箇所や、『家族のスキャンダル』の、
「トリニダードに住んでいた家族。
かあさん、とうさん。
そして長男。四十歳で独身で、
ある日、結婚したい娘(こ)ができたと、とうさんに言っ
た。
あの娘と結婚したいんだ。
あれまあ、息子よ、それは無理。
あの娘はお前の妹だ。
かあさんは知らないけどさ」
から始まって、息子は、良い娘を見つける度に、父親から、
「残念、あれはお前の妹だ」
と言われ、ついに母親に事情を話すと、
「かあさん笑って、
息子に言った。心配しないで。
とうさんは、あんたの本当のとうさんじゃない。
とうさんは知らないけどね」
と展開する歌詞。
フランス人男性歌手Renan Luceルナン・リュースの歌であれば、
「一ヶ月ほど前に誤配で届いた一通の手紙。
開封しちゃいけないんだろう、けど、
僕は男で、そういうのは好きで・・・」
要約するとこういう内容になる『手紙』とか。
うーん。
どれも、この歌詞に心ときめくのです、と胸を張って言えそうにない。
好きなメロディのその箇所にたまたまその歌詞が乗っていただけと言
えたらいいのにな。でも、やっぱり、私はこの歌詞に心を奪われるのだ
と、まずは認めるべきだろう。
認めてから、なぜ心がそう動くのかを考える。
考えみた。
すると、こういう私でいいとわかった。
こういう歌詞に心惹かれる私でいいのだ。