神風と自爆

 金曜日の夜を楽しもうとコンサートやレストランに繰り出した人達が
襲われた13日パリの連続自爆テロ
 それ以降、フランスのテレビ・ニュースで何度耳にしたことだろう。
 Kamikaze。
 eにアクセント記号がないので、フランス語では「カミカズ」と発音
されるが、聞くたび、戸惑う。
 「神風」って、二度までも好機の風が吹き、日本軍は守られ、元軍を
一掃できた元寇の乱のことでしょう。
 ところが、調べたら、一二八一年の弘安の役には暴風が吹いたようだ
が、一二七四年の文永の役の時は元軍が自ら撤退したと見るべきだとす
る新たな史実が発見されたか、あるいは神国日本をアピールするため史
実をねじ曲げて流布されていたのが、時が経ち、真実が暴かれたのか、
なんにせよ、学校の歴史の時間で時が止まっている私には寝耳に水。
 それに、神風と言われたら、普通は第二次世界大戦中の日本軍の特攻
隊を思い浮かべる、というのも初めて知った。
 特攻隊は、こんな飛行機ではまともに戦えないし引き返せもしない、
とわかっていて操縦桿を握らされた人達。なるほど、自爆テロはその延
長線上になる。
 Kamikazeが遣われる理由が納得できた。
 でも、どうか、人間を武器の一部と化すことで、敵と見なしている人
々を死の巻き添えにする戦い方もある、という発想を世に知らしめたの
が特攻隊でありませんように。
 Kamikazeはニホン語だから、無理な期待か。
 新潮社が旗振り役となり、公立図書館での新刊貸し出しに一定の猶予
期間を設けてほしいという意見が出たそうな。
 出版業界の先細りを図書館の新刊貸し出しのせいだとするのは、近視
眼的には正しいかも。でも、図書館利用者の大半は、待つ期間が少々延
びても苦にならないだろう。
 それよりも、そういう方策を最善の策であると主張する発想が、何の
因果もないはずなのに、買わない層をさらに増やすことに貢献しないか、
と私は危惧する。もしそうなったら、長期的には出版業界は自分で自分
の首を絞めることになる。
 本が売れないのは値段の高さも一因だとするなら、読み捨てを前提と
し、紙質が悪いがうんと安価な本も平行して売るとか。
 大人でも漢字を読めない人達が結構いることを考慮して、ルビを復活
させるとか。
 本をもっと買ってもらうための知恵は本当に出し尽くしたのか。
 書物の使命は、人の心の豊かさ、精神形成に寄与すること。
 その使命の遂行が図書館への苦言であるというところに、私は、出版
業界の自爆のようなものを感じさせられたのだった。