医者の合法的セクハラ

 友達と話をしていて、そういう話になったので、私が密かに疑ってい
たことを言ったら、
「そうに決まっているやん」
 即座に言われて、ああ、やっぱりそうなのか。
 失意のような悲しいような悔しいような、困惑。
 でも、これだ、という言葉が見つからないのは、時が経ちすぎたせい、
あるいは、私の側に弱みがあったせいか。
 患者という弱み。
 医者に対する弱者、と言い換えてもいい。
 以前、市から乳癌検診の受診用紙が届いたので、近くの内科に行った。
 マンモグラフィの画像のひとところを指し示しつつ、男性院長から、
この白く靄(もや)ったような所が気になる、再検査の判断をするしか
ないが、ぜ〜んぜん心配しなくていいから、と言われて帰ったので、市
から要精密検査の通知が来ても、驚くには当たらない。
 再度、病院に行き、ベッドに横たわり、超音波検査と触診。
 この触診が、実に五分以上続いた。
 小さい胸ですぐに指先が骨に突き当たるのに、そこまで触りまくらな
いとわからないのか。
 院長の能力のなさを疑いかけ、いや、そこまで触りまくらないと判断
できないしこりが感じ取られるのかも、と思うと落ち込みそうになる。
 院長の後ろで見守る看護婦。
 家に帰れば良きおかあさんなんだろうなあ、と思わせられるこの看護
婦が、
「この先生は本当に良いんだけど、乳癌検診だけは、恥ずかしいから、
ほかで診てもらうの」
 と言っていたっけ。
 彼女が名を挙げた婦人科病院は、マンモグラフィの設置がないからか、
市の乳癌検診の対象病院にはなっていないはず。そこは女性医師なので、
もし可能なら、私だって迷わずそこに行っていた。
 結局、胸を触りまくられた結果、「異常なし」
 今、インターネット上に「定期健診は不要。自己検診でしこりなどが
あれば、触診、超音波検査等を実施」という専門医のコメントを見つけ
た。
マンモグラフィで乳腺が高濃度の場合はエコーを勧めるが、それ以外
は交互もしくはマンモグラフィのみ」
 と回答している医師も。
 触診は必須、しかも五分以上入念に、というコメントは一つもない。
 あの院長は、彼の趣味で私を要精密検査の対象者にしたのかも。
 その可能性を完璧には排除できない。
 だとすると、医者のそういう不埒が入る隙のある診断法は、たとえ、
そのおかげで早期発見できる人がいたとしても、不合理の方がまさる。
 だいたい、専門医の見解が、乳癌の「定期検診は不要」ですって。
 健康診断はしないと言った友。
 彼女の方がまっとうだったのか。