思いは言葉にできてこそ

 友達が無性に生クリームが食べたくなり、家で生クリームをホイップ
して、ボールいっぱい食べたとか。
 すごいなあ。
 生クリームという限定でそういう気持ちになるのが理解できないが、
じゃあ、家で作ろう、と対処できるところがすごい。
 ハンドミキサーという文明の利器を頼っただけだろうけど、そうでき
るのは菓子作りが趣味の人の強味である。
 この話に触発されたのか、私は久しぶりにパフェが食べたくなった。
 それを実現する前に、この友と会い、ランチが目的だったが、そのあ
と、私は「パフェを食べたい」と宣言。
 喫煙可能の店に遭遇したくないなら、安全なのは百貨店。
 そのほぼ各階にある喫茶を覗きつつ、下の階へ。
 ランチの時は何料理でもかまわない、と友に全権委任し、自分が決め
るのかと戸惑う友に、
「こだわりたい時はちゃんとこだわるから」
 と付け加えたのであったが、まさしく、パフェに関しては、その言葉
どおりになった。
 ようやく抹茶パフェのある喫茶が見つかる。
 しかし、食品サンプルのパフェを見て、
「なんで、何か違うと思うんだろう」
 と呟いたら、友が、細く長い首状の部分に詰まっているのがゼリーだ
し、もっと言うなら、上に載っているのが、バナナやオレンジや桃や苺
などの果物類ではないからではないか、と指摘してくれて、
「おお」
 私が求めているパフェのイメージがはっきり具現化されたのであった。
 そうとわかったら、ここでこれを食べても、きっと気持ちは不完全燃
焼。
 友がスマホで近くのパフェの店を探してくれるが、そこまで行って喫
煙可能だったりしたら立ち直れないので、パフェは諦め、私が知ってい
るケーキの店に行った。
 俳優の知乃が三年前に演出家の市原幹也からセクハラを受けたと発表
し、告発された市原がセクハラを告発されてどう後悔したかのインタビ
ュー記事が、先日、新聞に載った。その横には、それを読んだ知乃の投
稿。
 その中で知乃が、ニホン人は性的接触の合意形成に言葉を尽くしてこ
なかったのではないか、と問題提起していたのが心に残った。
 うまく言えないけれど、感じていることはある。
 それは、他者に忖度されるべきではなく、まずは自分の言葉で言語化
できないと、他者を説得させられないという以前に、自分自身が消化不
良の気持ちを抱き続けることになるのではないか。
 思いは、言葉で言い表わせてこそ。
 初めに言葉ありき。
 それが私達人間だから。
 ああ、それにしても、正統派のパフェよ、君はいずこに。