年の初めはバーゲン

 正月の初売りの日に升酒を振る舞ったりしていた店々も、今や、そう
いう余計な回り道はやめたようで、ただただバーゲン一色。
 私も、初日から、連日、ショッピング三昧である。
 それでよいのか、と自問すると気弱になるが、心浮き立つ気分こそが
正月精神だと思うと、一転して鼻息が荒くなる。バスで五分の近場にデ
パートやら高級量販店やら専門店が並び立つロケーションも私を後押し。
 デパートを全館見て回り、財布を購入してから、向かいの量販店で馴
染みのファッションショップを覗くと、ハーブティを振る舞われた。
 デパートと隣接する立地は分が悪い。どうせならデパートで、と考え
るのが人情だからである。それに対抗するには、デパートがまともに取
り合わないミセス・マダム層をターゲットとするしかない。が、そうな
ると、くずれた体型をカバーする独特のシルエットが増える。この店も、
エストゴムで、テロンとした素材を数多く扱っていた。
 よって、即座にその存在は私のリストで無き物とされた。ところが、
英語のレッスンで、幼児を相手に飛んだり撥ねたりしゃがんだりがしや
すい服の必然性を痛感するに及び、この店が脳裏に甦ってきたのである。
 時、折しも夏のバーゲン。しかし、客層が客層だけに私の体格で九号、
それでもまだゆとりというサイズ展開で、シーズンさなかのごとき充実
度。勧められるままにすべて試着し、職業意識から“テロン”素材を二
着選び、個人の好みに合致したのでピンクのプリーツスカートとコット
ンパンツも購入。後日、秋物商品に押されて、店の片隅にさらに値下げ
になった売れ残りが数点吊されている中からも、また買い足した。
 まとめ買いと言っても、一つとして定価のものはなく、胸を張れない
気分だったのに、それでも上客と見なしてくれていたのね。ありがと。
 今回はハーブティをご馳走になっただけで、何も買わずに店を出た。
 いや、気長に待つから、もしもセーブルの毛皮のハーフコートが三分
の一ぐらいの値段になったら考えてもいい、とは伝えておいた。
 細木数子がスイス本社で何千万円かする時計を何百万円か値切る光景
がテレビ放映され、驚きの声があがっていたが、そういうことで驚くよ
うでは、一体、バーゲンで何を学んでいるのか、なのである。
 ハーブティを振る舞われて恐縮した私。強いことは言えないんだけど。