買ったばかりの薄紫色のシャツを着て行った。
下は白のスキニーパンツ。これは夏の終わりのセールで買った。くるぶし
丈がほしいとなったら、スキニーしかなかったのだ。
でも、足にぴったり沿って、履き心地が良い。それで、あろうことか色違
いで三着も買った。よそ行きでこういうことは始めて。
だって、外出用なら、違うシルエットの方が着こなしの幅が広がる。
しかし、そのスキニーは、そんな考えを抑え込むほど履き心地が良かった。
問題は、脚の形が如実に出ること。
ヒップから下に細くなっていくべきシルエットが、途中、太もものところ
で生地が膨らむ。私の太ももは、筋肉という点では褒められるしっかりした
存在感があり、ちょっと変、あるいはエロチックに見えないかなあ。
お尻の形もくっきり出る。その方が問題かも。
新型コロナウイルスの蔓延で自宅勤務の機会が増えたせいか、トップスは
だぼっとゆったりしたシルエットが定着したが、私の手持ちのシャツはみな、
身体のラインに沿う細身のシルエット。
上も下も細身ではバランスが悪い。
そこで、新たに買ったのが薄紫色のコットンシャツだった。
四色ある中でその色が一番私に似合うと店員に言われた。
「ごめんなさいね」
そんな前置き付きで何度も言われたのは、私がその色に気乗りしない理由
を述べていたからだ。
私は、その色のブラウスとシャツを持っている。ほかの色もある中でどれ、
となったら、どのショップの店員も私にその色を勧めたのである。
ただ、寸分違わず同じ色。
せめて少し濃いとか薄いとか、色に微妙な差があれば、ああまた、という
気分ではなくなり、もう少し心が弾むだろうに、なんでまったく同じなんだ
ろう。
だもんで、一番似合うのを選んだはずが、必需品を買うような冷めた気分
になる。
しかし、私を見た同僚が、
「わー、爽やか」
と声をあげてくれ、ようやく満足感が込み上げてきた。
別の一人は、
「菊さんって、そういう色が似合うね」
「そうなのよ」
と私。
だって、そうだから。
すると、
「否定しないんだ」
と言われて、困惑。
口先だけの謙遜は不要な関係だと思うから、そう言ったんだけどな。
あ、でも。
自分には似合わないけど、私には似合うということで、私のことを羨まし
い、と思う気持ちが同僚の心の中にチラッとでもあったのなら、私の答えは
ヌケヌケと厚かましかったことになる。
それでも。
白々しい謙遜は、言うのも聞くのも嫌なんだよなあ。
次の時には、どうしよう。