きのう、パリ五輪の開催式の日を狙ってTGV(新幹線)の三路線のケー
ブルが放火され、運行が止まり、人々は長距離バスや自動車の相乗りサイト
を検索して大わらわ。
それでも、さほど動じて見えないのは、ストとは理由が違えど影響は同じ
で、日頃から慣れているせいか。
私は、フランスに行くならストの可能性が低い時。
それが唯一の条件である。
この時期にストをすれば経営者を困らせられる、という時が選ばれるので、
学校休暇のシーズンはストに恰好のシーズンになる。
この四月は、フランスの学校休暇が始まる少し前に帰国する日程にした。
すると、私を泊めてくれる友人達は、
「パリで国内線の飛行機に乗り継いでナント空港まで来きたら。迎えに行く
から」
と言ってくれる。
帰国の日まで滞在する家も送ってくれると言う。
今まではパリからTGVで四時間ほどかけて行っていたが、パリ空港で国
内線に乗り継ぎ、降りたら車で迎えに来てくれているなら、ラク。
しかし、家から空港まで片道二時間、往復四時間の運転を強いることにな
り、TGVの最寄り駅まで迎えに来てもらっていた時とは、迷惑を掛ける度
合いが大きく異なる。
けど、好意に甘えて、飛行機だけの移動。
これで何か起こったら仕方ない。
起こった。
パリ空港で、整備点検という理由で国内線への搭乗が遅れ、ようやく搭乗
口へとアナウンスがあったと思ったら、また建物内に戻らされ、約一時間遅
れでシートベルトを締めると、機長がアナウンス。
「予定より大幅に遅れたので、すぐに出発しま~す」
という声の、なんという陽気さ。
一時間後、午前零時前に着くと、機長とスチュワーデスが並んで乗客を見
送ってくれるが、お喋りに夢中で、乗客はそっちのけ。
ああ、フランスに着いたんだなあ。
にんまり笑えてくるのは、こういう緩さが、社会を包容力あるものにして
くれると感じるからだ。
客から声をかけられた時に、即、応対できるなら、それ以外の時はお喋り
に興じていてもかまわない、という発想。
私は好き。
けど、やっぱりストは嫌。
帰国の前日、パリ空港の航空管制官がストを告知したらしい。
影響の大きさを危惧して、速やかに合意が為され、ストは撤回されたが、
すでに欠航便が発表されていたりして、多数の客が皺寄せを受けたとか。
それにしても、管制官までストをするとは。
フランスを、ストに遭わずに旅行できたら、運が良かった、と言ってい
いかもしれない。