私のフランスからの帰国日が、もしその前日であったら、パリ空港の航空
管制官のスト予定の日に当たっていた、と前号で書いたが、幻となったスト
のことを教えてくれたのは、滞在先の家の人だった。
帰国の朝、さらっと言われただけだったが、感慨深かった。
実は私は、スト予定のその日にフランスを発つつもりでいた。
それでいいかと空港まで送ってくれる友にメールで訊ね、了承のメールを
翌日受け取ったので、それから旅行代理店に連絡。
すると、帰りの、パリまでの国内線が満席になってしまったと言われる。
そんなにすぐに満席になるものなの。
しかも、まだ三ヶ月も先の便。
でも、それが現実なら、翌日の便は一万円高くなるが空きがあると言われ
たら、すぐにもそれを押さえたい。
だが、友に確認せねばならぬ。
旅行代理店の担当者にはそのまま電話口で待ってもらい、友にメールを送
り、祈るような気持ちでパソコンからMessengerでインターネット電話をか
けたら、奇跡的に出てくれた。
この友、メールは受信したらすぐ気づくのに、Messengerはメッセージも
電話も一日経っても気づかないことがあるとか。
その逆だと言う日本人の友もいて、スマホを持たない私はどうして人によ
り異なるのか理解不能だが、相手の都合に合わせてこちらが配慮させられる
のは面倒。
でも、この時は一刻を争うので、友の流儀に合わせて、まずメールを送り、
その直後にダメもとでMessengerに電話したのがよかったのだろう。
メールの返信を待ってもいいが、私は口頭で確認したかった。
かくて、予定の翌日の帰国便になった。
その意味では思いどおりにならなかった。
しかし、思いどおりにならなかったから、航空管制官のスト予告の日を避
けられた。
大学時代、私はバスガイドのアルバイトをしていて、その日は何台もバス
が連なる修学旅行の団体の仕事だった。
こういう日は一緒に昼食を食べるバスガイド仲間がたくさんになるので、
楽しい。
学生と同じ弁当をいただくことになり、列の最後に並んだ。
私の番が来て、私はひょいっと右側の列の弁当を取った。
意味不明。
夕方、車庫に戻ると、即、病院に行かされた。
意味不明。
私はそのまま帰宅したが、親しい友は昼食の弁当に当たって食中毒になり、
ひと晩、点滴をして病院で過ごすことになった。
今は遠方に住む彼女と会うことは滅多にないが、会えば必ず、その話にな
る。