重くヤバイ

 気力を奪う蒸し暑さは去った。思えば、薄着の夏に向かってボディラ
インの引き締めを目指したのは七月。それが、夏風邪を引いて一時中断
したら、今や、そのまま無期延期へと静かに移行しそうな様相である。
 私の友達に、体重が増えた我が身のことを「ああ、気持ち悪い」と連
発する者がいた。その度、当たり障りない相槌を打っていたが、とうと
う、ある日、「じゃあ、なんとかすれば」と口から出た。もしかして、
彼女は、私に「そんなことないよ」と言ってほしかったのだろうか。だ
としたら、お門違い。私は恋人でも旦那でもないのだから、愛情で目が
曇るわけにはいかないのだ。
 しかし、公言しなくとも、「ま、いいか」と自分自身に同意を求める
ようになったら要注意。まだ大丈夫よね、と偽りの自己暗示に身を委ね、
二度と戻れぬ片道切符の未来へと突き進むことになる。
 それでいいのか。マンションの子供達がフラフープで遊んでいるのを
見て、私はハッとした。
 今まで、週末に、バツイチ女性vs未婚女性が丁々発止とやり合うこて
こてのローカル番組があったが、彼女達が二週間で部分痩せに挑戦する
コーナーだけは役に立った。
 幾つかの方法の中で、ウエストサイズを落とすのに一番効果的だった
のがフラフープだ。これは、『あるある大辞典』でお腹のたるみを解消
する運動として紹介されていた動きに酷似するものだったので、なるほ
ど、と納得が強化された。フラフープは輪を落とさないことが必須だか
ら、運動としてはより過激になるのだろう。
 でも、どこで売ってるんだろ、と思っていたら、偶然、おもちゃ売り
場を通りかかった際、子供達がかしましく遊び騒いでいて、そのありか
に目を向けさせてくれた。
 早速二本購入。二本の理由は、幼児向け英語レッスンの時間に、子供
達に鬼ごっこの鬼から逃れる場所として使わせようというのだ。もしよ
さそうなら、もう一本買い増そう。
 それから、当然、本義的活用も。ではあるが、直径80センチもある
輪を見て、やる前から敗北感が募っている。
 まあ、まずは7月までやっていた「5分もあれば充分」エクササイズ
の再開だな。相撲のしこ踏みやら、テコンドーの足蹴りなど、お湯が沸
くのを待つあいだにするだけで、目に見える効果が現われたではないか。
 だってさあ。また、マンションのエレベーターに居合わせた小学生に
「たった一階かよ」とぼやかれるのは悔しいじゃん。