未だに不慣れ

 湿った空気に乗って金木犀の香りがやってくる。二日ほど前からかす
かに感じ始めていたのだが、我がマンションの金木犀でも、小さなオレ
ンジ色の星の花が、ちらほら目に付く大きさになってきた。
 今日は10月5日。毎年、この日に金木犀の香りがもっとも強烈にな
るのだが、やはり、今年は暑さが長引いたということなのだろう。それ
でも、なんとか開花の時期に滑り込みセーフはできたわけで、ある意味、
金木犀も健気(けなげ)だなあ。
 良い季節になったことだし、いよいよ五分で充分エクササイズの再開
だあ! と意気込んでいた矢先なのに、今朝からくしゃみは出るし、鼻
はぐずつく。
 きのうの昼間、雨が降った途端、気温が一気に20度ぐらいに下がっ
たらしいが、にもかかわらず、半袖のTシャツ姿だったのが響いたのか。
 フランスに行った当初、気温を読むのが下手で、マフラーなんて必要
ない、と思っていたら、「風邪引くわよ」。季節は春。こんなに晴れて、
大気にむっとした熱気すら感じられるのに、なんでこれが寒いのかなあ。
でも、せっかく貸してくれるというので、しぶしぶマフラーを首に巻い
た。が、すでに時遅し。医者にかかることになった。
 フランスから船でイギリスに渡った時も、私一人体調を崩し、ホーム
ステイ先の家に着くや否やベッドに横になり、この時は医者にかからず
に済んだものの、二日間ほど無為に家の中に逼塞せざるを得なくなった。
 しかし、夏ならよいかというと、そうでもなかったっけ。真夏にフラ
ンスアルプスで、中学生達に誘われ、半日プールに行ったことがあるが、
風はない。暑い。ところが、プールの水は私を拒む冷たさである。冷た
さに鈍感なのか我慢強いのか、彼らは平気で水を楽しんだが、それでも、
上がってきたら、二度と戻ることはなかった。灼熱の太陽の下、トドの
ごとく、みんなで甲羅干し。帰ってきてから、私一人、熱射病にかかり、
またまた二日間ほど、外出を自粛する羽目になった。
 まあ、外国の気候は不慣れなせいと大目に見るとしよう。
 だが、生まれ育ったこの地の気候に、未だに適切に対応できないって、
結構深刻な問題ではないかしらん。
 風邪薬を飲んで出勤しよう。Tシャツもやめ。

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