いつでも来い!

 マンション入居時にキッチンに置くオリジナル収納家具の提案があっ
たが、見た目が高価で値段に見合っていても、空間利用に難がある。電
子レンジやトースターをコンパクトに収納するラック開発では、通販会
社に“一日(いちじつ)の長”があるものなのか。母も通販で見つけて
きた。
 それが毎日の使用でガタが来たので、買い換えることになった。再び
通販である。ところが、母が求めたキッチン用ラック2点および洋服収
納家具1点の計3点が、皆、組み立て式だった。
 フランスに住み始めた頃、備え付けのクローゼットでは足らず、一番
簡素なハンガーラックを購入したが、その組み立て図のちゃちなこと、
と愚痴ったら、「そういう時の友達だろう」と愚痴を聞いてくれた相手
が組み立てに来てくれた。高級ドイツ製家具も組み立て式だったが、友
が友を引き連れてやって来てくれ、私は傍観していればよかった。
 しかし、母国に帰ってくると、こういうことで友人知人を頼ることに
気おくれがするから、おかしなものだ。まあ、家人ですら引き受けない
こと、と思えば当然かもしれないが。
 私は汗まみれで奮闘した。
 ところが、3点中2点までも組み立ての最終段階で不具合が発覚し、
解体して送り返し、再送されてきたのを新たに組み立てることになった。
けれども、一番大がかりな母用の洋服収納家具は、代替え品を開封した
時点で、板がでこぼこ。母は「もう、これでいいわ」と言うけれど、こ
こまでのひどさに妥協したのでは、私の気持ちが許さない。どうせ手配
も全部私がするんだから、と、返品して購入を取りやめた。
 そんなこんなはあったものの、キッチン用の2点が揃ったら、キッチ
ンの大掃除である。なんせ、捨てるラックを除けたら、その下のフロー
リングが汚れているし、後ろの壁にも埃が溜まっている。それを見てし
まったら、天井と壁の埃落としから、換気扇・シンク周りの掃除を経て、
最後の最後にフローリングのワックスがけに辿り着くしかない。
 我が身の安全のためにドイツ製の自然塗料「AURO」を使ったが、手
を下さないくせに、母は「なんか鼻を突く匂い」と勝手なことをほざい
てくれた。
 だが、年末の大掃除の前倒しと考えれば、よいタイミングではあった
ような。
 年賀状の裏面も作成してしまったし。
 やることが早いねえ、私。
 あ、でも年賀はがきの予約がまだだ!