恋の季節

 週に一度、保育園で子供達を間近に見るだけでも、家族を離れた集団
の中で揉まれるのは良いことだと感じさせられる。
 二歳の妹に過剰に気配りする五歳の姉は、小学生の兄がいる三人きょ
うだいだが、母親から暗に母親代わりを強要される家庭環境らしく、入
園当初、おとうさんの似顔絵は描けても、おかあさんの似顔絵は描けず、
目もうつろだったのが、にこにこ笑って子供らしさが回復した。
 母親が弟を溺愛する反動なのか、隙を見ては弟の頭をはたく四歳の姉
と、集団の輪を乱すわがまま放題の三歳の弟は、叱られ、諭され、褒め
られているうちに、徐々にましになってきた。
 部屋の真ん中にじっと立つ一歳児は、立つバランス感覚を体得中だが、
走り回る子供達にぶつかられると、あっけなくこける。が、泣くという
条件反射が彼女にはない。その逞しさがよいよねえ。
 しかし、やはり、同い年同士惹かれ合うのが自然の摂理か。
 英語レッスンの魚釣りゲームで、揉めていたのは五歳の男の子二人と
女の子一人。女の子の隣に座る場所争いであったと、あとで保育士の先
生から聞いたが、女の子を真ん中にする円満な解決法を発想できるほど
大人ではなかった模様。
 レッスン後、レゴ遊びしながら、「僕の家に遊びにおいでよ」「家、
知らんもん」「前に言ったやんか、えっとな…」の会話は三歳児同士。
 そう言えば、レッスン中にボート漕ぎでペアを組む際、わざわざ二歳
の女の子に近づいていくのは、必ず二歳の男の子だった。
 一生続く幸せな結婚を望むなら、古風に聞こえても、女から告白して
はいけません。男はチャレンジしたい生き物。彼にとっての「高嶺の花」
を演じ、満足させてあげなさい。あなたに興味を持たない相手なら、他
に目を向ければいいだけのこと……恋多きJ.F.ケネディ・ジュニアを射
止めたキャロリン・ベセットがバイブルにしたというので話題になった
恋愛読本『The Rules』の要旨であるが、その論の正しさを証明するよう
に、男の子が女の子に「好き」と発信している。
 人を好きになると、心に、甘やかで、優しい感情が溢れてくる。
 久しくそういう感情から遠ざかっているなあ、と、まだ字も書けない
“餓鬼ども”に気づかされ、帰宅の足が重くなった。
 しかも、あしたはバレンタインデーだ。くっ………。