ガス漏れ警報器

 料理はやっぱり炎が見えるガスが好き、というのはあくまで私の個人
的好みであるが、特にガスで御飯を炊くと美味しさの違いは歴然で、我
が家の台所事情にはいたく満足している。
 ところが、今、ガス会社の言うなりになるまいと抵抗していることが
ある。
 ガス漏れ警報器だ。
 有効期限が間近に迫り、切れたらどうなるのだろうと思っていたら、
市の会報に、我が家の天井に付いているのと同じ警報器の写真が載って
いる。なんでも、去年6月に消防法が改正され、“住宅用火災警報器
の設置が義務づけられたとか。我が家は入居時から付いており、何ヶ月
かごとに正常に作動するかどうか調べに来てくれるのを、「ええ、もう」
と毎回罰当たりな気持ちで迎え入れていたのが義務であることはわかっ
た。だけど、狭い台所に二つも警報器がいるのかなあ。
 市に問い合わせ、ガス会社のは“ガス漏れ”対応だとわかった。
 が、「それは絶対必要ですか」。私が詰め寄ると、「さあ。法律上、
そこまでは必要と見ていないんですけれど……」。
 マンションの管理組合も各家庭で対応を、と言っていることだし、わ
ずかな額でも合理的な見直しは大切。じゃあ、我が家は期限切れ放置で
行こうかねえ、と話し合っていた。
 そこへ、ガス会社から電話がかかってきて、「いつ、寄せてもらいま
しょう」。
 これに私がカチンときた。
 義務でないなら、もう少し話の持ってき方ってものがあるでしょう。
 化粧品の店で、来月、新製品が出るが、「一つ置いておきましょうか」
と言われて頷いたら、買う予約をしたと受け取られるようなことを経験
して、「なんとなくはめられる」ことをとても不愉快に感じるようにな
っている。
 私は、取り替えない理由を説明した。
 なのに、ポストにチラシが入る。有効期限が切れたので至急取り替え
させてほしい、必ず連絡してくれ、と。
 義務ではないがなるほど必要だと思わせてくれる言葉が一つもないの
で、意固地な態度が一層固まってしまった。
 今、我が家は、ガス漏れの自己責任地帯である。