根つき野菜

 スーパーで売っている葉もの野菜には、根つきのものと、根を切り落
とした二種類がある。どうも店によって方針が決まっているようだが、
どちらにしても、私は、以前は、根のあるなしにこだわらず、新鮮さと
値段だけを基準に買っていた。
 しかし、すぐに使うつもりが使いそびれて長く置くことになると、根
のない野菜は救いようがない。
 それが、根つきであれば、買ってきてすぐ袋から出し、根から水を吸
わせると“持ち”が良くなり、それでも使い切れなければ、何日か後に
再び水を吸わせると、またまた新鮮さを取り戻してくれる。
 おまけに、あとは捨てるばかりの根を土に植えれば、新しい葉が伸び
てくる。
 今朝は初めて、そうやって柔らかな水菜を収穫した。カナリア用だ。
 カナリアは青菜が大好き。あくの強いほうれん草以外は、小松菜、チ
ンゲンサイ、水菜、白菜、キャベツ、きゅうり……。なんでも食べる。
 穀物だけでなく、新鮮な青菜を一心についばむ姿を見ていると、バラ
ンスの取れた食生活に思えて、そういうところも、私がカナリアを好き
な理由かもしれない。 
 私の住んでいるマンションはベランダが広く、引っ越してから、ガー
デニングに目覚めた。けれども、土がたっぷり入る野菜用の深底のプラ
ンターは、去年の春、チューリップが咲き終わって球根を掘り起こして
のち、処分する気かどうか自分でも不明のまま、放置してあった。
 そこに、ものは試しと、水菜と小松菜の根を植えてみたら、人間の食
材向けには小さすぎるが、その分、どれも初々しい新芽の状態で出揃っ
てくれたのである。
 なんせ、鳥籠の掃除のあいだリビングで自由飛翔を許していたら、パ
キラの先端に芽が出たばかりの3ミリほどの新芽を食べ、七枚葉を三枚
葉にしてしまったような、うちのピィなのだ。
 あぶなっかしいのに、菜差しに差した水菜の上に体ごと乗っかって、
食べて、囀って、大満足の模様。
 また、家庭菜園に目覚めようかしらん。