やっぱ、口コミ

 ランチでもディナーでも、行き当たりばったりではロスする時間がも
ったいないので、なるだけ情報を入手し、いくつか候補を絞っておいて、
友達に選んでもらうおうとするのは、情報ストックが豊かでない私ゆえ
の方策である。
 人に聞く。グルメ本を立ち読みする。よっぽど良い情報がてんこ盛り
なら購入する。しかし、インターネットは、居ながらにして情報収集で
きて、こんな楽なことはない。
 ところが、「居酒屋」「静か」など言葉を入れてヒットしたページに
飛ぶと、ぐるなびやらホットペッパーのサイトに飛ぶことになるのだが、
なぜか、どのサイトでも同じ店がヒットする一方、それ以外に際立った
店が登場しない。検索方法を変えてみても同じこと。
 変だなあ。あの界隈はそんなにも飲食店が少なかったっけ。思わず自
分自身の記憶を疑いそうになる。
 なるほど、これが、いわゆる情報のかたよりなんだな。情報源が増え
ても、それに比例して情報が多様化せず、むしろ反対に、同じ情報にば
かり繰り返し出くわすことになる。夜六時台のテレビニュースをリモコ
ン・サーフィンしていれば、それがよくわかる。
 すると、各グルメサイトの掲載基準が気になってきた。
 どこでも取り上げられるぐらい美味しい店なのか。というか、掲載さ
れていない店は良くないのか、と考えると、それはない。
 割引きクーポンに、その秘密が隠されているんだろうな。
 クーポン客であっても、来店数を増やしてくれるなら、サイトへの掲
載広告費を差し引いても利益が見込めると、そういう店はそろばんをは
じいたのだ。あるいは、あらかじめ、その金額を料理代に上乗せした。
 それに、みながみな、クーポンを使うわけではない。
 友達に連れて行ってもらった店が、クーポンはなかったけれど、私の
カードで支払うならば期間限定の割引対象になっていたとあとで知った
時の悔しさと言ったら。
 しかし、まずは、味と雰囲気に満足できる店、というのが第一条件で
ある。
 インターネットを神を仰いでいては、そこからこぼれ落ちる情報が膨
大にあるとわかった今、信頼の置ける友の舌に勝る確かな情報源はない
と、古典的手法の偉大さを再認識した。
 割引きの有無は、おまけのラッキー。
 いや、もし、そういう依怙贔屓(えこひいき)なしに美味しい店が見
つかったら、それこそ正真正銘の一番になるだろう。