白いんげんダイエット

 連休明けに、テレビで「白いんげんダイエット」を見て、さっそくや
る気になった。
 連休最後の二日間で三キロ太った衝撃的事実に打ちのめされていたか
らもあるが、「おなかがへっこむ」という言葉が耳に心地よい。
 私は、「ああ、おなか、いっぱい」と言いつつ、おなかに手がいく人
間で、それが当然と思っていた。ところが、そういう時、胃に手を置く
人がいて、議論になり、私の方が異常なのだと気がついた。食べて膨張
する胃は臍(へそ)より上にあるものだからである。
 私は “胃下垂”。レントゲン写真を見て、医者からそう告げられた時
には、悪い冗談を聞いた気がしたものだったが、背が高い人は引力の関
係で胃が骨盤より下にさがりやすいらしい。
 それにしても、「おなか、いっぱい」なんて、紛らわしい言い方でな
ければ、私も、もっと早く、人との違いに気づけたと思うのだが。
 さて、ぽっこりおなかが解消するのだ! と意気込んだにしては、私
は、三分乾煎り(からいり)してうんぬん…の放映時間だけ、ほかにチ
ャンネル・サーフィンしていて、見逃してしまった。
 テレビのホームページにも説明はない。
 しかし、ほどなく、嘔吐や下痢の苦情が届きだしたという報道のおか
げで、その調理方法の全容を知ることができた。
 でも、私は、それを見ていたとしても、一晩水に浸けて、ことこと煮
る、昔ながらの方法を選んでいただろう。だって、たった三分煎っただ
けで胃が消化できるなら、もうとっくにそれが現代の常識に取って代わ
っていたはずだから。
 昔、筋肉増強剤を使うオリンピック選手の問題がクローズアップされ
た際、「筋肉の量がそこまで増えた人間がいたとしたら、普通の人間と
は全然別の進化した人間が生まれたことになる。そんなことがあり得る
でしょうか」と述べた人がいるが、同じ考え方である。
 もっとも、私には、フィスラーの圧力釜という、時間とガス代節約の
強い味方があるんだけど。
 一晩ふやかした豆を、水だけで、圧力釜の目盛り2にて四分間煮、冷
めたらポテトマッシャーで潰し、適当に小分けして冷凍庫に入れておく
という自己流アレンジにて、今、一キロ減。
 ちょっと怖いのは、念願どおりおなかの脂肪が落ちたとして、私の胃
下垂体型がますます際立つことにならないか、ということである。