克己心

 見るのは決勝トーナメントからでいい、と思いつつ、ついワールドカ
ップを見てしまう。サッカーは、ロスタイムがあっても試合終了時間が
それほど延びないので、心構えがしやすいからだろう。
 おかげで体内時計はめちゃくちゃ。少ない睡眠時間で生きられる人が
羨ましい。いや、私だって生きられる。けど、皺寄せは確実に翌日訪れ、
朦朧(もうろう)とした頭で一日過ごすことになってしまう。
 もし昼寝できたとしても、その時間はゼロ。建設的なことをしていな
いという意味でゼロになる。つまり、空しい。だけど、休日家にいると、
そのゼロが一日中続いただけで終わってしまうことも多いのは、なぜな
んだろう。
 職場なら、たとえ二十分でも時間が空くと手持ち無沙汰になることか
ら辿り着いた結論は、家には気を散らすものがいっぱい、ということ。
 五分間ダイエットが長続きしなかったり、エアロバイクやバランスボ
ールを購入しても、いつしか埃をかぶった置物になってしまうのは、そ
のせいなんだ----って、私のことです、はい。
 だったら、家が職場のおかあさんにはもっと厳しい状況なのかも。
 家族の求めにすぐ応じられる臨戦態勢が基本なので、その同じ環境下
で「今からは私の時間よ」と宣言しても、すぐに頭の切り替えができな
いし、そうしない方が家族に歓迎されるものだから、つい、じゃあ、ま
ずあれをして……と、本当は没我の境地で集中したい何かがあるのに、
後回しにしても苛立たないよう自分自身をなだめすかしているうちに、
気がついたら一生終わっていた、なんてことにもなりかねない。
 家にいると途端に非効率になってしまう私は、女というだけでその因
子を持ち合わせているのだろうか。
 蛙の入った水を徐々に熱していくと、蛙が茹だって死ぬ、とか、蚤
(のみ)を蓋つきビーカーに入れておくと、蓋を取っても、ビーカーの
高さ以上に飛ばなくなる、とか、眉唾かもしれないけれど、きっとそう
なんだろうなと思わせられるたとえ話に人ごとみたいにアハアハ笑った
あと、これじゃあいかん、と気を引き締めても、そこ止まり。
 でも、高齢者がパランス感覚が良くなり転倒しにくくなるとかで、各
地でトランポリン教室が流行り出したという情報に、やってみたいと思
っていたら、セール広告が出ていたので、私は、あした、トランポリン
を買いに行く。
 有形無形の誘惑にも負けず強い意志を発揮できるかどうか、再チャレ
ンジして、これまでのリベンジを果たすのサ。