まぐれはない

 眠い。今日とあしたは眠い。ワールドカップの準々決勝が一日に二試
合もあるんだもの。まだ朝なのに、もう頭が朦朧(もうろう)。こうい
う時は、最初に頭に浮かんできたことを選んでしまおう。
 私が今もひっかかっているのは、対ブラジル戦のあとの日本選手のコ
メントだ。一点先取して、相手を本気にさせてしまったかなあ、向こう
の顔つきが変わった、というような内容だった。試合直後のインタビュ
ーだったので、思った通りがそのまま言葉に出たのだと、その点では納
得できたが、そういう言葉が出たことに、私はなんと形容していいかわ
からぬ気持ちになった。じゃあ、相手が本気にならなければよかったの、
とか、本気になられたら終わりと思っていたの、というようなことだ。
中田ヒデは、そりゃあ、やりきれなかったであろう。まあ、ものすごく
好意的に受け止めれば、自分達の立ち位置が正確に認識できていただけ
立派、ということになるんだけど。
 ところが、応援する側はと言えば、試合前、テレビで「死ぬ気で頑張
れ」というのを耳にして、私は、あれまあ、と思った。死ぬ気で頑張り、
たとえ本当に死んでも、死と引き替えに、望む結果は得られない。実力
の世界とは、そういうものだ。一度や二度は番狂わせが起こることもあ
るかもしれないが、実力に大差ある場合は起こらない。なので、死ぬ気
などという言葉が出た時点で、たぶん、討ち死にを予感していたのだと
わかる。
 友達が資格試験の合格を目指していて、それは、上位何パーセントか
が合格という類いのものではなかった。試験前にナーバスになっている
友に、私は、「自分の解答で通らないなら、通さないほうが間違ってい
る、ぐらいの厚かましい気持ちで臨めばいいのよ」とエールを送った。
合格ラインをはるか頭上に見上げているうちは合格はおぼつかないが、
そうでないなら大丈夫、と言いたかったのだ。
 友は無事合格した。
 ほらね。実力がないのに、うっかり合格するようなことは起こらない
ものなのよ。
 今日の深夜からあしたの朝にかけてを乗り切れば、五日(現地時間四
日)以降は、普段よりちょっと早めに起きればよいので、楽勝。
 直接関係はないが、歯医者の予約を閉幕後の週に延ばしてもらった。