私が死んだら

 物に溢れた空間をすっきりさせるべく行動を開始した私は、今、溜ま
った新聞記事の切り抜きをどうしたものかと悩んでいる。
 スキャナーでパソコンに取り込むのも一手だが、パソコン画面で見る
のは、手でファイルを繰るより大ごとっぽくなりそうだし、保存しただ
けで満足してしまいそうでもあるし、何より、ファイル名を思い出せな
くて、結局、役に立たないような気もする。
 ところが、単語を入れれば、その単語を使用したすべてのファイルを
瞬時に一覧にしてくれるspotlightはpdfファイルの文章まで対象とし
てくれるとわかって、ただもう感激。で、安心して、まだ着手していな
い。
 だいたい、二ヶ月前にiMacを買ったのに、未だに保存データの移行が
完了していない私なのだ。
 市販の宛名ソフトで作ったデータはiMac用のをインストールしていな
いから、あけられないのは私の責任。ところが、ibookで標準のワープ
ロソフトとブラウザが今回標準からはずれ、その形式で保存していたデ
ータが読めない事態が発生した。
 ワープロ文書は別のソフトでひらけるけれど、インターネットで「こ
のページはあとでまた読みましょ」と気軽に保存のボタンを押しまくっ
たものは、すべからく読めない。これに懲りて、今後はpdfファイル保
存に切り替えることにした。
 まあ、ブラウザの保存データはibookなら見られるので、iMacからは
さっさと取り除くことである。が、捨てずに置いてある。過去のワープ
ロ文書も、読み出し可能のソフトで再保存するでもなく、そのまま放置。
 これって、いつか必要になるかも、と後生大事に服やカセットテープ
を処分できないのと同じではないか。
 すると、私がなんの前触れもなく突然この世を去る時へと思考が飛ん
だ。
 目に見える物は、誰かが処分してくれると安心していられる。
 しかし、私のパソコンの中だけに存在する登録情報などはどうなるの
だろう。
 一定期間ログインされた形跡がないと、消滅されるのだろうか。だけ
ど、銀行や株のインターネット取引で口座に預金があったら、それはど
うなるんだ。
 必ずあしたは来る、という大前提で気安く情報を溜め込んでいるけれ
ど、そういう根本的なことをわかっていなくて大丈夫なのかなあ。
 不安になりつつ、また一つ、フリーメールを入手した。