五人に一人は六十五歳以上

 カナリアの鳥かごを掃除する際、藁の巣を取り出そうとして、指先に
「ぐにゅ」と嫌な感触がしたら、やっぱり△!v×◎?◇ゞ?^;〜。
 くそ。
 って駄洒落かい。
 ピィは雄だが、足場が安定するらしく、巣の縁に立って眠るので、毎
朝、巣の掃除が加わるのだ。
 しかし、指は石鹸で洗えば済むことである。私には女性としての資質
が欠けているのだろうか、と、一瞬、気落ちしかけた。でも、どこに、
他者の排泄の世話が好きな人間がいるだろう。みんな、理性で感情を抑
えて義務を果たしているのであって、女性は、たまたま、その役目を引
き受けることが多かっただけなのだ。
 高齢の夫婦のどちらかがどちらかを殺す事件を耳にする機会が増えた
が、この春、二人暮らしをしていた八十九歳の夫が八十五歳の妻の首を
絞めて殺した一件は、今も記憶に残っている。
 妻は難病にかかったが、子に勧められても老人ホームへの入所を拒み、
家で転倒骨折して寝たきりになると、簡易トイレを使わないと言い張っ
て、ついには介護に疲れた夫が手をかけ、夫自身は自殺未遂に終わった
とか。
「老人ホームに入るぐらいなら、死んだ方がまし」とは、私の母も言う。
 確かに、いくらお金という対価を払っても、下(しも)の世話やら何
やらを理想的にしてもらえるのは「稀なる幸運」と覚悟しておくのが無
難であろう。
 でも、「死んだ方がまし」は、ものすごい脅しだ。限界まで努力して
いる者を追い詰める。
「子供もいるのに、老人ホームに入れられて」
「子供の家をたらい回しにさせられて」
 親世代は、さまざまに苛立つ。
 しかし、少子化の現在、私は「たらい回ししてもらえるだけ子供がい
て、幸せなんじゃない」などと言って、母を鼻白ませている。
 一体、子が親の面倒を見るべきなのか。見なくてよいのか。
 もし、昔ながらに子が親の面倒を見るのがこの国の基本とするのなら、
小泉政権で高齢者世帯の収入が減ったのは、そうすることで、老父母を
子供と同居させようという意図が隠されていると見ることができるかも
しれない。そうなれば、年金収入は家計の余剰、老人の小遣いというこ
とになる。
 個々の家庭の事情もあって難しい問題だが、なんにしても、死ぬまで
健康が一番。
 文科省の発表によると、小中高生の体力低下は1985年以降歯止めがか
からず、今年はなお一層悪かったとか。
 未来の老人たちよ、大丈夫なのか。