男達との外交術

 インターネットの株取引は熱が冷めたような状態になっているのでは
ないか。株式相場は元気がないし、ネット証券の新規口座開設数はめっ
きり減少。変わって人気はくりっく365だとか。
 私は、懲りずにその手の本を読んでいるのだが、ふむ、と感じ入る文
章に出くわした。
 まずは、「本を読まないトレーダーは失敗する」という断言である。
 もっとも、この著者が、本を出版する前にセミナーの講師を引き受け
たら、参加者から、あなたが言ったことは、本を多数出している某先生
とここが違うが、あなたは本を出していないから信用できないと決めつ
けられたそうで、本を出している人はえらい、という発想もこの世には
存在するのだが、本は、講師の立派な姿に騙されるような目くらましが
なく、純粋に書かれた内容そのものだけを吟味できる。
 なので、本を読むべし、だそうだ。「一冊の中に一、二ページでも役
に立つところあれば十分」。
 私は、弟の言葉を聞いているような気分になる。
 ワープロ時代の終焉が予感される頃、弟に背を押されてパソコンを購
入したのはいいけれど、弟は近くに住んでおらず、しょっちゅうは頼れ
ない。でも、パソコンの進化改善に目を塞いでいるならかまわないか、
と考えていたら、「本や雑誌を買って読めよ。一ページでも二ページで
も役に立つところがあったら、買っただけの価値はある」と言われたの
だ。
 必要な時、教えてくれたらすむのに、ケチ。
 でも、そんなに知識を出し惜しみする気なら、頼りません。
 私は、助言だけは素直に受け入れ、わからないなりに本や雑誌を読ん
だ。
 そして、今や、弟の関与なくして、二台買い換えている。自立はいい
なあ。
 ところが、友達から、落雷でWindows が起動しなくなった、と至急
SOSのメールが来たら、Mac派の私はお手上げ。いや、これはそういう
ことに関係なく「復旧不能」と私にも思えたが、万が一の可能性を求め
て技術屋の男達に教えを請うメールを送ったら、弟からは、いつもどお
り「それだけの情報では返答できません。メーカーに問い合わせてもら
ってください」
 別の知人は無視。
 懇切丁寧に書いてきてくれたのは一人いたが、これにより私はしみじ
み学んだ。
 男達は、獅子の親みたいなもので、話が通じる以前の、あまりに馬鹿
馬鹿しいレベルは相手にしてくれない。
 それを敢えて協力させるには、その方が得になる利害関係に持ち込む
必要があるのだ、たぶん。