夏バテ

 周りに太った人が多いと、自分自身も太りやすいという調査結果がア
メリカで発表になったそうだが、強く共感できる。
 友人のフランス人は拒食症かと思うほど小食で、まだ未成熟の体型に
見えるせいか、よくティーンエイジャーに間違えられる。
 そこまでは行きすぎで、羨ましくならないけれど、彼女と並んで撮っ
た写真を見ると、考え込まされる。
 じわじわ体重が増えてきていた私。
 ちょうど、テレビで、ビリーズブートキャンプのダイジェスト版がこ
れでもかというほど放映されていたので、しっかり目に焼き付けておい
て、お風呂の前にやってみた。
 小腹が空いたら、キャベツの葉っぱをもぐもぐ囓る。
 噛むのは脳への刺激になるし、生のキャベツにも立派に味がある、と
理屈で考えれば、味に飽きて続かない、なんて贅沢な言い訳で、挫折す
る自分自身を正当化することにはならない。
 体重が、わずかずつ下降ラインを描き始めた。
 ところが、今月に入ってストップ。いや、ゆるやかに逆戻り。
 あまりの暑さに、ビリーもキャベツもやっていられなくなったのだ。
 冷房と外気温の差を生き延びるだけで、精一杯。
 ついには、ずいぶん前にもらったビール券を交換することを思いつい
た。
 我が家はアルコールに弱い家系。その中にあって、私一人、果敢に体
質改善に挑んだこともあったけれど、パリにいた頃、アパルトマンから
ワンブロック先のレストランなら大丈夫だろうと、ワインをコップに三
杯飲んだら、血の気が失せて真っ青になり、這うようにして帰ったよう
な体験に懲り、その世界とはきっぱり決別する意志が固まった。
 ビールの大瓶二本と引き替えてもらっても、ほとんど捨てることにな
るだろうけど、仕方ないか。
 すると、缶ビールとも交換できると、スーパーの店員が教えてくれた。
そして、パック売りの方がひと缶当たりの単価が割安になると言う。
 差額を払ってまで二缶余分に買うのが賢明な判断かに迷うが、素直に
従った。
 思考停止。
 アルコールは、ストレスを発散した気分になるだけ。理性が消えて、
たががはずれるだけ。そんな身も蓋もない真実に身を晒す前から、そう
なっていないかい。
 まあ、死者が出るほどの暑さなら、思考力が鈍っても当然、と居直る
どころか、ビールでさらに輪を掛けようと企んだ時点で、完全に「壊れ
た」気がしないでもないのだが。
 全部飲み終わったら、秋よ、来い。
 朝五時台の仄暗さは、もう秋なんだけど。