外国語の効用

 今日、知り合いのフランス人が日本に着いた。
 日本企業で働くためで、三月三日の初出勤までに住むアパートを決め、
必要な物も取り揃えなければならないのだが、受け入れ企業の社員が手
助けしてくれるそうな。
 事前に「そうします」と連絡があったらしく、彼女は、仕事時間外の
そこまでの献身にいたく感心。
「それに比べて、フランスは」
 出国前のメールに書いてきて、私は苦笑。
 違う文化に接すると、自分の国と比較することになるのは当然として、
自ら望んで学んだ言語の国に関しては、何かにつけて、その国の方が優
れているように見えるものなのか。
 別のフランス人も日本びいきで、パリは悪くないけど、東京はアクテ
ィブで面白いと言い、大学を卒業後、日本でしか働いたことがない。た
だ、彼の場合、フランス企業に限っている点が、人生の最後まで日本に
浸りきる覚悟のなさを物語っているのだが、帰国した際、年金などで不
利にならないよう、そこは外せないらしい。日本女性に憧れるから、結
婚相手は、絶対、日本人。いずれフランスに連れて帰るのが彼の未来設
計図だ。
 英語を学んだら英語圏の人、フランス語ならフランス人、日本語なら
日本人と結婚するのが、どうしても語学学習の理想のゴールになってし
まうのかなあ。フランス語を勉強したけど、結婚したのはスウェーデン
人、なんて方が〃恋〃としてよっぽど純粋に思えるけど。
 私は、義務教育の英語より自発的に学んだフランス語が下手ってどう
よ、というのが原動力となって、時間はかかったが、なんとかフランス
語をものにすることができたし、フランス人の知り合いも増えた。
 しかし、日本で外国語と言えば、やっぱり英語。
 今はパソコン上でどこの国の言葉でも読んだり聞いたりできるので、
英語力をキープ、あるいはレベルアップする機会には事欠かない。
 なのに、〃やる気〃が高まらない。レベルアップしたところで、その
英語を誰相手に遣うのよ、と現実的に考えるからだろう。
 その点、結婚相手は一生〃やる気〃を燃やしてくれる相手。
 ゴールが結婚になるのは、とても自然なことだったのね。
 じゃあ、私も相手を探してみようかしら。
 出身国不問。
 国や言葉に憧れて、そういう背景を生まれ持った人に限定して憧れる
という初級は、もうとっくに卒業してしまったのだ。
 要は人柄。
 好みのタイプまでなくなったのも外国語のおかげだと思うと、大いに
感謝である。