年賀状の宛名印刷

 年賀状を自分のパソコンで作成する人達は、だいたい、いつ頃までに
印刷を完了するものなのだろう。
 私は、夏の終わりにデザインが出来ていながら、なかなか印刷に辿り
着けなかった。いろどり年賀が好評売り切れで増刷と聞くと、増刷分を
入手して、流行に便乗したくなったのだ。
 近くの郵便局は予約分にも対応できず、追加入荷分はその消化で終わ
るとか。一方、別の郵便局は「入る予定です。いつかはわかりませんが」
という返答だったので、待ってみることにした。
 それでも、十二月ともなれば、あきらめるべきだろう。これが最後、
と窓口を訪れたら、「完売してしました」。
 週に一度しかその町に行かない私だもの、仕方ないね。
 と、「熊のプーさんのなら、まだ少しあります」
 トラ年にクマ・・・と思うものの、目新しさという点では好ましいの
で、それで妥協。
 印刷しようとしたら、母から宛名印刷を頼まれた。
 以前、母専用のデザインを作って印刷したことがある。しかし、なぜ
かその時期、トナーの出方が変で、色がかすれて喪中葉書みたいになっ
た。私は、私の最多使用目的から、黒のレーザープリンタを装備してい
たのだ。母は、翌年以降、再び、町の年賀状印刷に回帰していった。
 その母が宛名印刷を頼む。
 曰く、「みんな、そうしてる」。
 みんな?
 私は、ぬうっと母を見た。
 みんなとは。
 大多数がマルと言っても、バツが正しいこともある。それを、得体の
知れぬ不特定多数を持ち出すとは、自分の頭では一切ものを考えないと
いう意思表示とみてよろしいのでしょうか。違うよね。自分に都合のい
い時だけ、「みんな」を味方に自分を正当化しようとするだけなんでし
ょ。ああ、ケーベツ。
 なんで素直に、手書きが面倒になったって言えないかなあ。
 私自身は、宛名は絶対手書き。だって、デザインどころか宛名まで印
刷だと、あまりに機械的じゃない。
 さて、殊勝なムスメは、自分の年賀状より先に、母の願いに応じまし
た。Wordの宛名印刷はなんかもたつくので、ほぼ死蔵状態にあるibook
を引っ張り出してきて。そちらには宛名ソフトがインストールしてある。
「今年は出さないけど、この人達の住所も入力しておいて」。
 自分じゃ指一本触れぬ母の、ぬけぬけ、厚かましいこと。
 そして私は、私自身の宛名ソフトを母の交友関係のためだけに使うこ
とが納得できなくて、信念を曲げ、ついに、私自身も、宛名印刷の世界
へと足を踏み入れたのだった。