ころっとスカイプ派

 東京に住むフランス人がSkypeを勧める。
 インターネットで無料電話できるソフト。
「うん、いいねえ」
 聞き流していたら、メールに、ダウンロードのURLが送られてきた。
 私は沈黙。
 が、だんだん罪悪感が膨れあがってきて、次に電話がかかってくると、
「あなたのIDを知らなくっちゃ、私がダウンロードしても、電話でき
ないじゃない」。まるで相手の落ち度のように言った。
 すると、プロバイダーと、彼に教えてあるフリーメールの両方にID
が送られてきて、間違いなく私に受け取らせたい、読ませたいってこと
なのね。
 さて、困った。
 フリーメールが無料なのはすんなり納得できたが、スカイプが無料な
のは、わかったようでわからず、そんなうまい話があるわけない、と警
戒してしまうためか、どうも気乗りしない。
 そんな気分だと、遠距離ったって外国と日本じゃあるまいし、国内電
話を安く上げたいという発想がけちくさい、とか、給料がユーロ建てで、
近頃のユーロ安のせいで資金難なの、と嫌味なことが心に浮かんでくる。
 ソフトをダウンロードしてパソコンが不調になったりしないよう、ま
ずはバックアップさせてよね。ibookから移した中に、今のiMacで読み
取れない書類があって、この際、それらをまともにしてからにしたいの
で、ちょっと時間はかかるけど。
 OperaFirefoxをダウンロードした時の、あの無防備さが嘘みたい。
 しかし、写真を整理している最中、これからダウンロードしてみよう、
と心が動く時が来て、すぐに実行。
 初めてスカイプで話したら、彼の声が美しく響き、じかに聞くよりず
っといいじゃない。
 無料の安心感ゆえか、ゆったり構えて話し込めるのもいい。
「あ、ビデオ電話にする?」と聞かれたのには、「私のうしろはぐちゃ
ぐちゃだから、いい」。
 本当は、私自身が「ぐちゃぐちゃだから」拒否したのだが。
 こうなる展開を予期して、デフォルトはビデオカメラがONなのを、
OFFにしておいて、よかった。
 でも、もし外出間際の完璧なる出で立ちだったとしても、私は、やっ
ぱりビデオ電話は「やめとこう」かな。
 普通の電話だったら、それほど集中しなくてよい操作をパソコン上で
続ける、というように空いた手を使える自由があるけれど、ビデオ電話
は、相手の目をじっと見つめて話さなければならないのが、行動の制約
だから。
 それを除けば、スカイプに全面心服。
 友も仲間に入れようと、早速、自主的広報活動を開始した。