結婚でなくちゃいけないの

 結婚しない人が増えているのは、今に始まったことではないけれど、
出会いの場がないこともその一因、と考えたどこかの和尚が、お寺の中
で出会いパーティを開いたら、えらく反響があって、二回目を開催、と
いうニュースをテレビで見た。三十九歳の男性でも最年少で、男も女も
上は優に七十歳を越えていると聞くと、もともと、そういう年齢の人達
が対象だったのか。参加者を募ったら、そうなったのか。
 一回目に参加し、意気投合した男性とカップルになったが御縁がなか
ったものとしてもらった高齢の女性が、二回目にも参加していたが、一
回目の相手を振った理由が、興味深い。
 カップルになった相手と、後日、改めて外で会ったら、「一緒に住め
たらいいですね」と言われ、まだそこまでの気持ちになっていなかった
ので、お断りしたとか。
 結婚していない私が言うのもなんだが、結婚する理由は人それぞれ。
「好き」というのは限りなく個人的な感情で、感情は移ろいやすいから、
惚れた腫れたの恋愛で結婚しても、一生バラ色とならないこともあると
は、今や小学生でも知っていそうな常識だし、良き打算こそ必要だとは、
広く世間を見渡していれば、学べる。
 打算の中には「一人は淋しい」というのもあり得るだろう。
 個人的には、「一人は淋しい」という発想を是認した時点で、自分か
ら他者に働きかけるのではなく、誰かに自分をかまってもらって幸福に
感じたいという依存の気配を嗅ぎ取り、困惑なのだが。
 連れ合いと死に別れて、淋しい。
 誰かと暮らした経験があると、ずっと独身できた人より、一人が身に
染みるのかもしれない。
 でも、申し訳ないけど、もうあした寝たきりになっても仕方ない年齢
に達している自分を、ちゃんと客観視できているのかなあ。
「自分の面倒を見てもらいたい」という期待が、実は「一人は淋しい」
よりもっと大きいことはないのか。
 一回目でカップルになった男性が、すぐにも一緒に住みたいと言った
のはそういうことなのだろうし、断った女性は、それを敏感に察知して、
腰が引けたのだろう。
 田辺聖子が「茶飲み友達で置いておけばいいものを、男と女の関係に
なって、せっかくの関係を駄目にする」というようなことを書いていた
けど、ほんと同感。
「一年生になった〜らッ」ではなく、
「六十歳、七十歳になった〜らッ。友達百人、できるかな」
 百人作れる高齢者になりたいな、私は。