ダイエットのコツ

 信州に住む友の誕生日が巡ってきた。
 メールで「おめでとう。いつ電話したらいい?」と訊ねるのは、数年
前に手術した彼女の体調を慮(おもんぱか)ってのこと。
 なんせ、手術後一年目ぐらいに遊びに行ったら、彼女は少し歩くだけ
で疲れるし、家でも「ちょっと横にならせて」と休息。ぽっちゃり体型
になったのも、子供を二人産んだとか中年太りの始まりではなく、手術
が原因と見た。
 このまま一生、体調、体型が戻らなくても、仕方ないよね。
 ところが、返信メールは「今、ボーリングの国際大会を見に東京に来
ています。帰ったら連絡するネ」
 ボーリング?
 その唐突さに面食らうものの、観戦旅行に出かけられるぐらい元気な
んだと、ひとまず安心。
 旅から戻った彼女と電話したら、三年前からボーリングをしていると
言う。
 手術をきっかけに専業主婦になり、三年前にダンナが平日単身赴任に
なると、健康の元は食事だと考える彼女は、週末に一週間分の総菜を作
ってダンナに持たせるようになったが、同じ食事を自分達も食べるとな
ると、平日は包丁を持たなくていいことになり、閑な時間を有意義に使
うべく始めたのがボーリングだったそうな。
 市のボーリング教室に入ったら、愉快な仲間もでき、五日間に四十ゲ
ームこなすし、個人的にプロについて習うようにもなって、各地で大会
があると見に行くような昨今の生活。
「体力がついたのかなあ。風邪も引かなくなった」
 そう聞いて、私は、先日、奈良の大神(おおみわ)神社のご神体、三
輪山に入山した時のことを話した。わずか四百六十七メートルなのに、
一緒に登った友に、私は何度も「もう引き返そうか」と声をかけなくて
はならず、普段、室内自転車や足首におもりをつけることを気まぐれに
しているだけでも効果はあると実感したのだ。
「太ももは一番大きな筋肉なので、それを鍛えるのが効率いいって、本
当なのね」
 すると、彼女は「でも私は、今、小さな筋肉にも注目している」。
 市が主催する筋生理学の講座を受講し、その知識を活かして、週末は、
ダンナと共にエクササイズ&温泉で、筋力アップにもいそしんでいると
か。
「三年間で体重が十キロ落ちて、結婚前もあり得なかったSサイズよ」。
 思わず、一旦電話を切って、写メールを送ってもらったら、確かにボ
ディラインにぴったりのパンツ姿が誇らしげ。
「なんで、そうなれたのよ!」
「ええーっ。楽しんでやっていたら、自然に痩せたの」
 ・・・。
 それが王道だと、彼女は知っていたのかなあ。